問われるNATOの役割 北欧2カ国加盟にトルコ反対

来月、EU首脳会議で安保戦略

伝統的な中立を放棄し北大西洋条約機構(NATO)に加盟すると発表するフィンランドのマリン首相=15日、ヘルシンキ(AFP時事)

ロシアのウクライナへの軍事侵攻が長期化する中、直接ウクライナを軍事支援できない北大西洋条約機構(NATO)の葛藤が続いている。ロシアが東西冷戦後の欧州安全保障の枠組みに決定的影響を与える中、北欧2カ国が軍事的中立を捨ててNATO加盟を目指すことでNATOの役割が改めて問われている。(パリ・安倍雅信)

フィンランドとスウェーデンは、ウクライナ危機を受け、ロシアの軍事侵攻を防ぐため、これまでの軍事的中立を捨て、NATO加盟申請に舵(かじ)を切った。加盟決定は全会一致が原則だが、加盟国トルコのエルドアン大統領が、北欧2カ国がトルコ政府のテロリストと指摘するクルド人勢力を擁護しているとして、加盟に反対している。

そもそもNATOは1948年に、旧ソ連邦の拡大に対抗する防衛軍事同盟として、大西洋を挟み、米英加仏を含む12カ国によって設立された。加盟国の1国でも武力攻撃を受けた場合、他の加盟国によって防衛に当たる集団的自衛が原則だ。

今回、ロシアがウクライナに軍事侵攻してもNATO軍が参戦しないのは、ウクライナがNATO加盟国ではなく、西欧とロシアの全面戦争を回避したいからだ。だが、ロシアがウクライナを武力制圧すれば、ウクライナに接するNATO加盟国のポーランド、スロバキア、ハンガリー、ルーマニアがロシアの直接の脅威にさらされる。

ソ連の崩壊による東西冷戦が終結した1991年以降、ソ連邦から離脱した東欧諸国は次々にNATOに加わり、現在はその東側はベラルーシ、ウクライナ、モルドバと接している。ロシアは昨年暮れ、これ以上NATOが東方拡大しない保証を求めた。

冷戦終結後、欧州連合(EU)も東欧諸国の加盟申請を受け入れ、ロシアから見れば、NATO、EU共にロシアにとって脅威と映っている。そのことはプーチン露大統領の発言の端々にうかがえる。背景にはEUがロシアの武力行使による膨張主義を警戒し、強い不信感を持っていることが挙げられるが、ロシア側にも同じことが言える。

先進7カ国(G7)は冷戦後、ロシアの民主化を促進する意味も込め、G7に迎え入れた。だが、2014年のウクライナ東部侵攻および、クリミアの強引な併合を受け、ロシアへの信頼は破綻し、G7から排除された。

EUがロシア制裁目的で経済依存解消に舵を切り、NATOもロシアの軍事的脅威に正面から向き合う中、欧州防衛の再検討を迫られている。NATOは08年にウクライナの加盟を打診し、14年のロシアのクリミア併合後、さらに加盟に優先的立場を与えたが、ロシアの反対で実現しなかった。

ウクライナのゼレンスキー大統領は同件について「ウクライナがNATO加盟国ではないのは明白だ。私たちはこれを理解している」と述べ、現時点で一方的にNATO加盟に向かう意志を表明していない。無論、国内にはNATO加盟を強く支持する世論もあり、今回の危機でその主張は強まっている。

問題は、ロシアの脅威をNATOがどう読んでいるかだが、NATO加盟国の英国のトラス外相は、ウクライナに隣接するモルドバにロシアの侵略に備え、「NATO標準の装備を整えるべきだ」と21日に発言した。旧ソ連邦のモルドバはNATO非加盟国だ。トラス氏は「プーチン氏の大ロシア建設の野望はウクライナにとどまらない」と述べている。

フランスのマクロン大統領は、北欧2カ国が脅威にさらされれば防衛協力する用意があると表明した。ドイツのショルツ首相は、NATO加盟までの移行期間の安全保障を求めるスウェーデンとフィンランドに対して軍事協力を「強化」することを約束した。

NATOは北欧2カ国を受け入れることで、ロシアとの対立をさらに鮮明にすることになる。EUは来月末、ウクライナ危機を受け、不安定化が避けられない欧州の新たな安全保障戦略を話し合う首脳会議を予定しており、大きな曲がり角に差し掛かっている。