対露・NATO関係見直し焦点 仏大統領選で有権者が注目

フランス大統領選第一回目の投票する有権者ら=フランス・パリ、2022年4月10日(UPI)

【パリ安倍雅信】フランスでは大統領選の決選投票を24日に控え、現職のエマニュエル・マクロン大統領、右派・国民連合(RN)のマリーヌ・ルペン候補の戦いが激化している。両者ともに第1回投票で敗退した左派有権者の票や浮動票の取り込みに必死だが、大統領選には珍しく対ロシア外交や北大西洋条約機構(NATO)との関係見直しも有権者の関心を集めている。

有権者の最大の関心事は年金改革や失業対策、高騰するエネルギー価格や物価だが、連日、欧州を戦争に巻き込む可能性を否定できないウクライナ危機が報じられている。数万人規模でウクライナ避難民を受け入れているフランスでも関心は高い。

マクロン氏は第1回投票前からロシアへの対抗策でフランスの指導力を強調している。現在、欧州連合(EU)の議長国でもあるフランスの大統領として、ウクライナのゼレンスキー大統領と頻繁に連絡を取り合い、フランスおよびEUが主導する和平に取り組んでいる最中だ。

10日、パリでフランス大統領選第1回投票の結果を支持者向け演説するマクロン大統領(左)と「国民連合(RN)」のルペン氏(AFP時事)

同時に2019年に「NATOは脳死状態だ」と発言したマクロン氏は当時、加盟国からは批判された一方、プーチン露大統領からは称賛された経緯がある。マクロン氏はウクライナ危機を機にNATO改革や欧州防衛体制の議論を本格化させたいところだ。

一方、ルペン氏はEUからの離脱は口にしていないが、NATOの統合軍事機構から脱退する方針を主張しており、「ウクライナでの和平成立後、NATOはロシアに戦略的に接近すべきだ」として、経済面、外交面でロシアとの対立を続けることはフランスに国益をもたらさないとの考えを示している。

マクロン氏にとっては、ドイツがウクライナへの武器供与を躊躇(ちゅうちょ)したことでウクライナおよびEU加盟国から強い批判を浴びたことから、フランスの指導力を示すチャンスとも捉えているが、今のところ和平への貢献にまでは至っていない。

肝心の有権者の間からは、「もはや大国ともいえないフランスのマクロン大統領の言うことをプーチン氏が聞くとは思えない」という声も聞かれる。他国での戦争が大統領選に影響を与える前代未聞の状況が続いている。

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