変革機運で2大政党没落 欧州戦争危機下のフランス大統領選(下)

フランス大統領の立候補らのポスターの前を通る子供を乗せた自転車=フランス・パリ、2022年4月10日(UPI)

フランス大統領選挙の第1回投票の結果、中道右派政党・共和党(LR)のペクレス候補、中道左派・社会党(PS)のイダルゴ候補は大敗した。この保革2大政党は選挙運動費用を受け取る下限の得票率5%を割り込む過去最低の得票率となり、両党とも数億円の供託金を国に納める事態に陥った。また、環境政党「ヨーロッパエコロジー・緑の党」(EELV)のジャド氏(54)も大敗した。

今回の選挙で政治状況は大きく変化した。ロシア軍がウクライナに全面侵攻したことで、欧州の安全保障やエネルギー問題が急浮上し、各候補の政策論争が進まず、国内政治への関心が薄れ、棄権率は2002年の記録(棄権28・4%)ほどではなかったものの、26%と5年前より4ポイント増えた。最新の世論調査ではフランス人の58%が政治に関心がないという政治不信の傾向も指摘され、特に若者の間で「魅力的候補者がいない」との意見もある。

中道のエマニュエル・マクロン大統領の第1回投票の得票率が5年前の同選挙を上回ったのは、1988年のミッテラン元大統領を除き、第5共和政では初めてのことだ。欧州連合(EU)議長国としてマクロン氏はウクライナ危機への対応に夢中になり過ぎ、一時は劣勢になったが最終的にはその外交活動もプラスに転じた。

一方、決選投票に臨む右派・国民連合(RN)のマリーヌ・ルペン候補は、第1回投票の翌日の11日にはマクロン氏と同様、選挙遊説を開始した。移民政策の変更のための国民投票を提案し、労働者や生活困窮者に寄り添った公約を掲げており、今や移民排撃やネオナチとの関係が指摘された過去の極右イメージを脱している。

もともと今回の選挙は「右派の選挙」と呼ばれるほど中道のマクロン氏を含め右派から勢いのある候補が出て、左派は最初から勢いがなく支持率は最後まで低迷した。PSが5年前よりさらに大敗したことについて、フランスの一時代の終焉(しゅうえん)を意味しているという専門家も多い。

決選投票に進めなかったものの3位になった急進左派・不屈のフランス党を率いるジャン・リュック・メランション候補は、左派で1人、労働者向けに明確な政策メッセージを流し続け、ルペン氏に迫った。この結果、左派陣営内で最も影響力を持つ政治指導者になった。

メランション氏は、24日の決選に向けマクロン氏への投票を呼び掛けていないが、「ルペン候補に1票たりとも入れないように」と支持者に訴えている。しかし、政治アナリストの中には、「大方の予想はルペン氏が大統領になることはあり得ないと言っているが、数の多い労働者層の票がルペン氏に流れる可能性もあり得る」との指摘もある。

ただ、仏公共放送フランス2は、メランション氏に投票した有権者の中で迷っている人が少なくないことを紹介している。左派イデオロギーではなく生活優先を理由に投票を行った有権者が多く、富裕層や企業寄りと批判されるマクロン氏より、ルペン氏を支持する有権者も少なくない。

実際、1970年代にルペン候補の父親のジャンマリ・ルペン氏が立ち上げた国民戦線を前身とするRNは、今日に至るまで支持率を落としたことはない。移民と失業に苦しんできたフランスを根底から変えてくれる政治指導者は誰なのか。政党や政治イデオロギーより、過去にないほど社会を根底から変革してくれる人物を選ぼうという機運が高まっている大統領選挙ともいえる。(パリ・安倍雅信)

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