ウクライナ侵攻 ロシア、戦争に反対する人々を弾圧

“虚偽の流布”に最大禁錮15年
独立系メディア閉鎖、SNSも遮断

ウクライナ侵攻を続けるロシアが、国内で徹底した情報統制を推し進めている。ロシア軍や軍事行動に関する“虚偽の流布”に対し、最大で禁錮15年を科す法改正を行った。当局の公式発表に基づかない報道は虚偽とされ、欧米系メディアは記者の安全確保のため活動を停止した。ロシアの独立系メディアもすでに一部が閉鎖され、主要SNSも遮断された。
(繁田善成)

6日、モスクワで、反戦デモ参加者を拘束・連行するロシアの警官(EPA時事)

ロシアの情報統制は、行き着くところまで行ったようだ。ロシア軍の活動について、公式発表に反する「虚偽の情報」を広めた場合、最大で禁錮3年が科せられる。また、虚偽の情報を広めたことが「重大な結果」を招いた場合は、最大で禁錮15年が科せられる。

プーチン大統領が署名し4日に成立したこの刑法改正の影響は大きく、欧米系メディアは記者の安全確保のために活動を停止した。

ロシアの独立系メディアであり、政府に批判的だったテレビ局「ドーシチ(雨)」やラジオ局「モスクワのこだま」は放送を遮断され、事実上の閉鎖に追い込まれた。若者らが客観的な情報収集の手段として活用してきたフェイスブックやツイッターなどのSNSも次々と遮断された。

“虚偽の流布”はどうにでも解釈できる。積もった雪に木の棒で「戦争に反対」と書いた女性や、説教の中で「戦争に反対する」と発言した司祭が逮捕された。

このような中でも筆者のロシアの友人たちは、今のところ遮断されていないSNSでメッセージを送ってくる。彼らが使うSNSは一定時間が経過するとメッセージが消去され、匿名性も高いという。

「知識人たちはウクライナ侵攻に反対している。でも、残念ながら少数派だ」

「全世界に対して恥ずかしい。ウクライナの人たちに申し訳ない。ひざまずいてただ許しを請うことしかできない」

「オレの祖母はウクライナ人で、ハリコフに住んでいる。どうなるか分からない。もちろん捕まるのは怖いが、デモに参加する」

6日に、ウクライナ侵攻に抗議しロシア全土で行われたデモは、各地で警察当局に制圧され、参加者4600人以上が拘束された。

独立系メディアやSNSを封じ込める一方で、テレビやラジオなどロシアのメディアは、「ウクライナ軍によるロシア系住民への攻撃」や、ロシア軍による「住民保護」の様子を延々と報じ続ける。

「ウクライナが3月に予定していた、ドンバス(ドネツクやルガンスク)のロシア系住民を虐殺する攻撃計画に関する秘密文書を発見した」「ロシアに通じる人道回廊の設置で合意したが、ウクライナの妨害により住民の脱出が進んでいない」などである。

また、セルビアの首都ベオグラードで4日に開かれた「ウクライナ侵攻支持集会」で、人々が熱狂的にロシアを支持する映像も、繰り返し流されている。

メディアが流す「ロシア軍の華々しい活躍」の一方で、欧米の制裁はロシア経済に大きな打撃を与えつつある。外国企業の撤退も相次ぎ、石油大手のBPやシェル、フォルクスワーゲンやBMW、トヨタ自動車もロシアでの事業停止を明らかにした。国民生活に深く関わる分野でも、マクドナルドがロシア全土の全850店舗を一時閉鎖したほか、欧米系のファストフードや食品製造企業などが事業停止を表明している。

それでもテレビに出演するコメンテーターたちは「ロシアは原子力潜水艦のようなものだ」として、世界とのつながりが絶たれても単独でやっていけると豪語する。2014年のクリミア併合を受け欧米諸国が対露経済制裁を科して以降、農業を含む国内産業育成に力を入れてきたため、食糧自給にも問題はないとしている。しかし、そのような状況でロシアはどこまでやっていけるのか。政府のプロパガンダがつくり出した幻想はいつかは消え去り、現実を直視せざるを得ない時がくるだろう。

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