トップ国際中国中国プロパガンダに対抗せよ、「日本の真の独立を目指す有識者会議」兼原信克氏が講演

中国プロパガンダに対抗せよ、「日本の真の独立を目指す有識者会議」兼原信克氏が講演

戦略コミュニケーション部は必要

 中国は、第2次世界大戦のアジア戦線において、中国共産党が「軍国主義・ファシズムの日本」に対する戦いに勝利し民衆を救ったとする「偽のナラティブ」を国内外に広めている。第2次安倍晋三政権で内閣官房副長官補、国家安全保障局次長を歴任した兼原信克氏は、中国共産党が国際社会への宣伝工作を強め、真実を隠そうとしていると警鐘を鳴らした。

笹川平和財団理事の兼原信克氏(右)と対談する山下英次・大阪市立大名誉教授=8日、東京都渋谷区(豊田剛撮影)

 保守系の学識経験者らでつくる「日本の真の独立を目指す有識者会議」(議長・小堀桂一郎東京大学名誉教授)の講演会が8日、東京都内で開かれた。「中国共産党が語れない日中近現代史の真実」をテーマに、同会議の創設者の山下英次・大阪市立大名誉教授がコーディネーターを務め、笹川平和財団常務理事の兼原氏が講演した。

 中国共産党による権威主義体制では客観的な歴史研究や検証が行われず、「偽のナラティブ」を国内外に流布するなど、国家ぐるみの情報統制が行われている。

日本は真実の発信を

 対日歴史戦はいつ始まったのか。兼原氏は、1989年の天安門事件後に共産党統治の正当性が揺らぎ、江沢民政権が抗日戦争の勝利を党の正当性の根拠に据える愛国主義教育を本格化させた時期に根源があるとの見方を示した。

 山下氏は、習近平政権になってから、中国共産党が「日本から中国人民を救った」という「偽のナラティブ」を強調するようになったと指摘。天安門事件後に国際的孤立と経済制裁に陥っていた中国を救う形となった1992年の天皇陛下(現在の上皇陛下)訪中の事実は、不都合なものとして歴史から抹消されていると述べた。

 兼原氏は、日本人には昔から「宣伝をするのは〝武人の誉れ〟ではない」という美徳があるため、自己宣伝や情報戦が苦手だと解説した。中国が「うそも100万回言えば本当になる」というやり方をするなら、それ以上に言い返すなど政府が対抗しなければ物量で負けてしまう。「真実のナラティブ」を粘り強く発信すべきだと訴えた。

講演した笹川平和財団理事の兼原信克氏=8日、東京都渋谷区(豊田剛撮影)

対中情報戦意識した安倍氏

 そこで、第2次安倍政権のやり方が参考になるという。中国のプロパガンダに対して危機感を抱いていた安倍氏は、政府広報室を拡大し、戦略コミュニケーション部を設置する構想を描いていた。領土問題担当相(当時)の山本一太氏の下で、内閣官房に島嶼(とうしょ)・領土に関する発信・広報の司令塔となる「領土・主権対策企画調整室」が新設され、「領土・主権展示館」(東京都千代田区)が造られた。

 こうした経緯から兼原氏は、内閣官房の広報官の下、外務省、防衛省、警察庁、海上保安庁、さらに学術界が連携する形で情報発信をする戦略コミュニケーション部を設置するのが理想的だと指摘した。

 日中関係については、価値観が違って相いれないが、「お互い商売しているから共通の利益がある」と説明。中国の国内総生産が日本を大きく上回っていても、欧米や日本との結び付きを必要としている事実に変わりはない。「西側経済という水槽で息をしている」中国が、西側諸国を「敵に回すことはできない」との見方を示した。

 その上で、日本には中国に押し付ける力はなく、「米国と一緒にやっていくしかない」と強調。「物量で押し切る」中国に対し、アフリカなどのグローバルサウスでは、中国側の一方的な主張が浸透する恐れがあると警戒感を示した。

台湾有事で経済は大打撃

 兼原氏は、台湾有事が起きた場合の日本への影響についても解説した。

 「アジアに流入している大量の短期ドル・リスクマネーが巻き戻される。円、元、台湾ドルなどのアジア通貨は暴落し、アジアの株式市場も同様に暴落する」

 金融パニックのシナリオをこう描いた上で、「台湾海域はもとより、東シナ海、南シナ海が戦闘海域になる」と予想する。レアアースを含む対中貿易も、台湾からの半導体の輸入も途絶えるという。

 日本経済を支える船舶はわずか4000隻で、食糧の3分の2を海外に依存している現実がある。「東シナ海、南シナ海、セレベス海、スールー海が戦闘海域となれば、マラッカ海峡、ロンボク海峡も使えなくなる」。船舶は大迂回(うかい)を強いられ、海運コストが上昇すると分析した。また、海上自衛隊の護衛艦は約50隻で、紛争地域全域を護衛する能力はないとした。

 「戦争しない時の防衛費は鉄板の経済対策」と主張する兼原氏は、有事になって数百兆円を投じるより、平時に数兆円から数十兆円を抑止力や経済安全保障に充てる方が費用対効果が高いと分析。宇宙、サイバー、AIなど軍民両用の先端技術に政府が資金を投じるべきで、「孤立主義的傾向の出てきた米国をアジアに引き留めるためには、日本が米国の責任を分有することが必要」だと訴えた。

習近平は晩年の秀吉

 習近平独裁体制下では、反日感情が急速に刷り込まれている。「何も知らないまま『洗脳』された中国人が10億人いる。これが怖い」と指摘。反日感情と国内の不満が結び付いている状態を「密閉容器の中でガス圧が高まっている」と表現した。国民が真実を知らされないだけでなく、「真実を言えば処罰される」という恐怖の下にあり、疑問を呈する人は皆刑務所に入れられてしまう。

 権力の引き際が見えず、権力を独占している習近平国家主席は最大のリスク要因だ。兼原氏は、あえてナンバー2を置かずに権力を一人に集中させ、逆らう者を排除して周囲をイエスマンばかりにする姿を、千利休らに切腹を命じた晩年の豊臣秀吉に重ね合わせた。

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »