トップ国際中国【NEWSクローズ・アップ】「団結」はチベット文化の排除 中国「民族団結法」7月施行 ダライ・ラマ14世の甥が講演

【NEWSクローズ・アップ】「団結」はチベット文化の排除 中国「民族団結法」7月施行 ダライ・ラマ14世の甥が講演

中国の「民族団結進歩促進法」について講演するチベット亡命政府元国会議員のケドゥプ・トゥンドック氏=5月27日、東京・永田町の参議院議員会館
中国の「民族団結進歩促進法」について講演するチベット亡命政府元国会議員のケドゥプ・トゥンドック氏=5月27日、東京・永田町の参議院議員会館

 中国で3月に開かれた全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、「民族の団結」を損なう行為の禁止を明記した「民族団結進歩促進法」が可決され、7月1日に施行される。同法によって中国政府が少数民族への同化政策を加速させることが強く懸念されている。(宮田陽一郎)

 このほど東京・永田町の参議院議員会館で開かれた「アジアの自由と民主主義を考える講演会」(主催・同講演会実行委員会)では、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世の甥(おい)でチベット亡命政府元国会議員のケドゥプ・トゥンドック氏が、同法への強い危機感を示すとともに、少数民族の宗教や文化を奪おうとする中国政府を厳しく批判した。

 ケドゥプ氏はダライ・ラマ14世の兄の長男。現在は台湾を中心にチベットの人権問題などのために活動している。

 基調講演を行ったケドゥプ氏は、民族団結進歩促進法の「団結」について「多様性を否定し、(中国共産党)一党支配の正当化をもくろむもの」と指摘。「一見、少数民族の権利を保護しているように見えるが、実際は同化することを企てている。これは決して団結ではない」と述べた。

 同法は標準中国語での基礎教育を求めるなど、中国国内の少数民族を「中華民族」として統合する狙いがある。また「民族の団結」を妨害した中国国外の組織や個人の法的責任を追及することも規定している。

 施行されれば、少数民族への統制がさらに強まることが憂慮される。ケドゥプ氏は「私たちの日常生活への国家の介入、監視が正当化される」と非難。同法は「少数民族の文化の基礎を破壊する意図を持ったもの」であり、「中国はチベットを完全に消滅させるため、アイデンティティー、文化を排除しようとしている」と危機感をあらわにした。

 また「1950年以前、チベットは独立国家だった。世界はこのことを忘れてはならない」と呼び掛けた。中国政府が「解放」とする同年のチベット侵攻に対して「歴史は決してプロパガンダで変えることはできない」と語った。

 さらに、チベットの輪廻(りんね)転生制度によるダライ・ラマの後継者選定について「何百年もの間維持してきた非常に神聖な行事」と説明。「しかし今日、無神論を掲げる中国が、自分たちにダライ・ラマを任命する権利があると主張している。これは宗教に対する冒涜(ぼうとく)だ」と強調した。

 その上で「次のダライ・ラマは法王庁、そしてチベットの人々の自由な意思によって選ばれるということを申し上げたい」と宣言。「北京政府には、この問題に関与する権利も権限もない」と断じた。

 ケドゥプ氏は「チベット内外の人々は非暴力の抵抗を今日も続けている」と指摘。「チベットの人々の精神には、尊厳、輝き、強い抵抗精神が宿っている」と述べて「侵略を永遠に続けることはできない」と訴えた。

 そして「チベットはいずれ必ず独立する」と表明。「独立や自由は与えられるものではなく、努力して勝ち取るもの。世界はチベットと共に真実と正義、自由のために立ち上がってほしい」と呼び掛けた。

 このほか講演会では、ダライ・ラマ法王日本代表部事務所日本・東アジア代表のアリヤ・ツェワン・ギャルポ氏が、中国政府の宗教政策について「全ての宗教のリーダーを選ぶ権利は中国共産党政権にあると法律で定めている。また、宗教の教えの中には習近平(国家主席)の理念がなければならないとしている」と説明。「このままでは、中国国内の宗教と国外の宗教との対立に発展する。とても危険なことであり、注意すべきだ」と語った。

 さらに、中国政府によってチベットの子供たちが強制的に寄宿制学校で勉強させられている問題に言及。子供たちは中国語によるカリキュラムで教育されるため、学校の休みに実家に帰っても家族とのチベット語での会話が難しくなるという。

 アリヤ氏は「勉強というよりも洗脳されている」と強調するとともに「これはチベットだけでなく、ウイグルや南モンゴルでも行われている」と指摘。「寄宿制学校は子供たちからチベットの考え方や宗教を全て奪うことを狙っている」と述べた。

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