トップ国際中国【NEWSクローズ・アップ】少数民族情報を動画配信へ「ヴォイス・オブ・フリーアジア」開設 中国の「破壊」新法に強い警戒

【NEWSクローズ・アップ】少数民族情報を動画配信へ「ヴォイス・オブ・フリーアジア」開設 中国の「破壊」新法に強い警戒

新たな情報発信のためのユーチューブチャンネルを開いたことを説明するペマ・ギャルポ会長=4日午後、東京都文京区(石井孝秀撮影)
新たな情報発信のためのユーチューブチャンネルを開いたことを説明するペマ・ギャルポ会長=4日午後、東京都文京区(石井孝秀撮影)

 自由と民主主義を求めるアジア諸民族の現状を伝えるため、一般社団法人「アジア自由民主連帯協議会」(ペマ・ギャルポ会長)は動画配信サイトのユーチューブで情報発信のためのチャンネル「ヴォイス・オブ・フリーアジア」を開設した。番組発足を記念したシンポジウムが4日、都内で開かれ、同協議会に所属するウイグル人やモンゴル人などの民主活動家らが出席。日本社会への情報発信や意見交換などへの期待の声が上がった一方、出席者のほとんどが3月の中国全国人民代表大会(全人代)で可決された「民族団結進歩促進法」を強く懸念。同法の施行は7月1日からだが、中国共産党による人権問題の深刻さを再確認する場となった。(石井孝秀)

 中国には56の少数民族がいるとされているが、同法は「民族の団結」を損なう行為の禁止が明記されている。民族の独自性を否定し、標準中国語教育の徹底化が求められるなど、各民族の言語や歴史、伝統文化がより一層衰退していく恐れがある。

 チベット自治区出身で、同協議会理事のチュイデンブン氏は「これは明らかに中国の憲法にも違反している」と批判し、「団結や進歩など法律の名前は美しいが、中身は促進法ではなく民族破壊法だ」と強調した。

 また、海外の組織・個人による「民族分裂につながる行為」に対して、法的責任の追及が盛り込まれたことにも触れて懸念を表明。海外で民主活動を行うチベット人やウイグル人などへの言論に圧力をかける「越境弾圧」だけでなく、「仮に日本人がチベット人を応援するとか、中国からの迫害に関する勉強会に参加していた場合、観光や仕事で訪中すると拘束される可能性もある」と述べ、中国国籍を持たない外国人であっても処罰の対象になり得ると指摘した。

右からチュイデンブン氏、イリハム・マハムティ氏、オルホノド・ダイチン氏、近衛義成氏=4日、東京都文京区
右からチュイデンブン氏、イリハム・マハムティ氏、オルホノド・ダイチン氏、近衛義成氏=4日、東京都文京区

 新疆ウイグル自治区の出身で、同協議会の常任副会長のイリハム・マハムティ氏は「このままだと5年か10年で完全に私たちの民族は消えてしまう」と懸念。「法律ができれば、内政を理由に干渉がより難しくなる。私たちはこの世界に存在しなかったことになってしまうかもしれない」と危機感を募らせた。

 さらに同法が多数派の漢民族に与え得る影響も指摘。イリハム氏は「同法は民族の分裂を禁止しているだけでなく、愛国主義も呼び掛けている。中国政府に少しでも不満があれば、漢民族であってもウイグル人のようにまとめて強制収容所へ入れられるという状況になってしまうのではないか」と推測した。

 中国共産党による弾圧が強まっているからこそ、今回「ヴォイス・オブ・フリーアジア」が発足した意味も大きい。内モンゴル自治区出身で、同協議会のオルホノド・ダイチン常任副会長は「アジアの自由民主化の一番の大本は中国の問題だ」と強調。民族を「抹消」していく中国共産党の政策は「国内問題ではなく国際問題」とした上で、「専門的な討論番組を何回かに分けて発信したい。中国の本質を理解する上で、とても必要だ」と訴えた。

 中国民主活動家の近衛義成氏は、現状を「正義と不義の戦争だ」と表現する。現在、中国国内では漢民族でも極端な経済格差に不満が高まっており、その対策として「中国共産党は米国など『帝国主義諸国』へ責任転嫁し、国民の団結を維持しようとしている」と言及。そのような教育を受け続けてきた漢民族の若者世代が「世界の真実を知れば、ここにいる皆と一緒に戦ってくれる可能性がある」として、改めて情報発信の重要性を説いた。

 ペマ会長は今回、新たな情報発信のチャンネルを立ち上げた理由について「米国のラジオ放送局『ラジオ・フリー・アジア』が米国政府から援助を打ち切られ、一時期運営停止に追い込まれた。アジアのニュースが世界に十分に伝わらないということにならないよう、自前のものを立ち上げた。日本だけでなく世界に発信していくものにしていきたい」と意欲を示した。

 同チャンネルでは4月23日現在、シンポジウム出席者のメッセージの一部を紹介。5月からは週ごとに更新し、北朝鮮問題や東南アジアの問題なども取り上げていく方針だという。

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