トップ国際中国台湾、中国におもねる最大野党党首 頼総統「統一を平和で隠すな」

台湾、中国におもねる最大野党党首 頼総統「統一を平和で隠すな」

 中国共産党の習近平総書記(国家主席)は台湾最大野党・国民党の鄭麗文主席(党首)を招待し、10日に北京で会談を行った。両党トップの会談は約9年半ぶり。両氏は台湾独立に反対するという共通認識の下、台湾海峡の緊張が高まる中で平和を演出し、2028年の総統選で台湾の頼清徳政権を下野させようとしている。会談で鄭氏は歴代国民党党首よりもさらに中国側におもねる言動が目立ち、台湾の主流民意に反する接近となった。(宮沢玲衣)

10日、北京で記者会見する台湾最大野党・国民党の鄭麗文主席(党首、中央)(時事)
10日、北京で記者会見する台湾最大野党・国民党の鄭麗文主席(党首、中央)(時事)

 「どんなことであれ、両岸関係(台中関係)の平和の助けになるのであれば私は喜んで行動する」

 会談後の記者会見で鄭氏が強調するように発した一言だ。驚くことに国民党は、鄭氏訪中の数日前に「十分に平和でこそ、私たちは安心して寝そべられる」という約1分の動画を公開。軍用機などで台湾を日々武力で脅かしているのは中国なのだが、その中国との平和のためには対抗する武器を捨てて、中国に迎合すべきだと暗に示しているかのようだった。

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 鄭氏は、中台間の敵対的な関係に終止符を打つことは、長年中国共産党と複雑な関係にある国民党主席としての責任だとしている。国民党は第2次国共合作で日本軍と戦うために中国共産党と手を組んだものの、その後は内戦で共産党に負けて台湾へ逃げ込み、今の中華民国(台湾)をつくった歴史がある。国民党からすれば、第2次世界大戦前から台湾に居住していた人々を中心に結成され、現在の政権与党となった民進党は邪魔な存在だ。また、「台湾独立」に反対の立場を取っている。

 両党トップは会談で中国大陸と台湾は不可分とする「一つの中国」原則も確認したという。「一つの中国」に対して、台湾は中華人民共和国の一地域でしかないとするのが中国の認識。国民党はその「中国」は「中華民国」であるという認識であり、両者では意味合いが異なっていた。そのため、基本的には「一中各表(一つの中国についてそれぞれが表明する)」という立場であった。しかし、鄭氏は「各表一中」の立場を示すようになった。小さな違いのように見えるが、これは共産党にとって統一の障害であった「一中各表」が下ろされ、共産党の望む「一つの中国」の形に近づいた結果になったことを表している。

 会談後の12日、中国側は台湾への10項目の優遇策を発表し、国民党をパイプとした平和と融和を演出した。これらの優遇策の中には農水産品の輸入拡大、「内容が健全」な台湾の映像作品の中国国内での配信、中国の上海市と福建省の住民の個人旅行での訪台の試験的再開などがあった。条件付きの項目が多く、実際にどこまで具体化するかは不透明だが、中国側の理屈で停止していたものもあるにもかかわらず、まるで鄭氏との会談が褒美に値するとでも言わんばかりだ。

 台湾の頼総統は15日、鄭、習両氏の会談について初めて考えを示し、「平和は、主権の妥協や譲歩で台湾を一つの中国の枠組みに入れ、独裁政権に合わせることで得られるものではない。統一を平和で覆い隠しても、民意に背くだけでなく、台湾に計り知れない禍根を残す」と批判した。

 鄭氏は主席就任後から人気を得られず、美麗島電子報の民意調査によると、3月の時点での鄭氏の不信任率は54.5%に上る。習氏と会談を行うことで、自身が中国とのパイプであるとアピールし、まずは今年11月の地方選で勝利し、2028年の総統選で政権交代を目指したい思惑があったのだろう。しかし、台湾の民主主義は、多くの血を流して、やっとのことで得たものだ。一般市民が平和を望み、戦争を忌避するのは当然の心境だが、民意は「現状維持」を支持しており、「統一」は望んでいない。鄭氏率いる国民党は、中国共産党の統一促進の思惑と台湾民意の間で板挟みとなっている。

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