トップ国際中国日本の防衛力強化を恐れる中国は張り子の虎

日本の防衛力強化を恐れる中国は張り子の虎

戦争学研究家 上岡龍次

陸上自衛隊の健軍駐屯地に入る長射程ミサイル関連の機材を載せたとみられる車両=9日未明、熊本市東区
陸上自衛隊の健軍駐屯地に入る長射程ミサイル関連の機材を載せたとみられる車両=9日未明、熊本市東区

日本の長射程ミサイルを恐れる中国

 中国はこれまで日本の自衛隊が弾道ミサイルを迎撃するミサイル防衛システムと敵基地攻撃能力を持つことに反発してきた。これまでは親中派勢力を用いて妨害していたが、自衛隊は敵基地攻撃能力を備えた長射程ミサイルを正式に配備した。

 長射程ミサイルは日本から中国を攻撃する能力になることから中国優位が崩れた。このことから中国は日本の自衛を超えた軍事強化だと批判した。中国は「日本の新型軍国主義が地域の平和と安定を脅かしており、国際社会は高度に警戒すべきだ」と批判したが、欧米で中国の主張に同意した国は出なかった。

新型軍国主義とは何だ?

 中国は「日本の新型軍国主義が地域の平和と安定を脅かしており、国際社会は高度に警戒すべきだ」と批判したが、これは中国がしていることを日本に置き換えただけ。類似の言葉を使い、被害者と加害者の立場を変えて知らない者を騙す手法。

■中国、日本の長距離ミサイル配備に「自衛超える」と批判 大使館侵入からめ「軍国主義」
https://www.sankei.com/article/20260401-V3LL5TRQS5IRVE74N3KHOSXV6A/

 戦前の日本の政治家・外務省は国際社会のマナーを知らなかった。これが原因で当時の白人世界を怒らせ、アメリカ主導のABCD包囲網が形成され日本からの開戦に至っている。簡単に説明すれば日露戦争で、アメリカが仲裁国なのに当時の日本政府は仲裁国のアメリカに和平の手数料を支払わなかった。国際社会では戦争の仲裁国には間接的に手数料を支払うのがマナー。

 当時のアメリカは民間人ハリマンを用いてハリマン構想を日本に提案したが拒否された。当時の政治家と外務省が国際社会のマナーを知らなかったことから、アメリカからの間接的な交渉に気付かなかった。これでアメリカは日本に対して不満を持ち始めた。

 第一次世界大戦で日本は連合国側に参戦したが、アメリカ・フランスから日本陸軍2千人をヨーロッパに派遣するように要請されたが拒否。さらに日本海軍を地中海にドイツ海軍の潜水艦対策で派遣するように要請したが拒否。代わりに日本は太平洋のドイツ植民地パラオを攻撃し占領した。イギリス・フランスの度重なる要請で日本海軍を地中海に派遣したが遅かった。白人世界からは、要請外のパラオ占領は日本の火事場泥棒と見なされた。

 1927年からの国民党率いる蒋介石が共産党を打倒する北伐を開始。当時の中国は内戦状態であり無政府とも言える状態だった。国民党が北伐を開始すると中国各地で現地の中国人が外国人を襲撃する事件が増加。これに白人世界は連合して対応するが、日本は白人世界からの要請を拒否して単独外交を選んだ。

 白人世界では集団的自衛権が基本であり、要請を受けたら軍隊を派遣するのがマナー。何故なら軍隊を派遣することで「自国は火事場泥棒ではない」ことを示す。集団的自衛権は今の平和を守る軍事行動だから単独外交は敵対行動になる。

 日本の政治家と外務省の失態で白人世界を怒らせ日本は孤立する。この責任を軍隊に押し付けて戦争を開始した。簡単に説明すれば意図的に日本は平和を否定していない。だが結果論として日本が選んだことが戦争に至った。

 中国は南シナ海に人工島を建設しアメリカ主導の反発を招いた。さらに中国は南シナ海の人工島の領有を主張して航行の自由を妨害している。これは国際海峡を自国の領土と見なして外国船の航行を停止させる。だから今の欧米は中国を警戒している。

 さらに中国は2013年から一帯一路構想で世界に貿易圏を急拡大させた。中国は一帯一路構想に参加した国に金を貸して返せなくなると現地の資産を奪うことにした。中国は現地の港などを軍事基地化してアメリカに対抗する姿を見せたことで今の平和を否定することが明らかになる。これが中国の新型軍国主義であり日本に置き換えて批判している。

総人口の1%が総兵力の限界

 国家が保有する常備軍は総人口の1%が限界であり少子高齢化の要素を加える必要がある。日本であれば総人口1億2千万人だから自衛隊の総兵力は120万人になる。そこから少子高齢化の要素を加えると80万人が自衛隊の総兵力であり50万人が自衛隊の軍縮規模になる。

・最大:自衛隊総兵力80万人
・軍縮:自衛隊総兵力50万人
・現在:自衛隊総兵力23万人

 今の自衛隊総兵力23万人では外国軍と決戦を行う正面戦争は2回まで。何故なら戦死・負傷などを含んだ損害回復に対応できないから。日本は予備自衛官・予備自衛官補などを増やしているが焼け石に水。このため根本的な総兵力を50万人にしなければ対応できないし、さらに外国のように州兵・国家憲兵・国内軍などの戦略予備が存在しない。

 戦後日本は警察予備隊から自衛隊に至ったが根本的な自衛力強化は行われていない。仮に日本は平和を脅かす国と批判するなら、自衛隊総兵力が80万人を超え、さらに外国のように州兵・国家憲兵・国内軍などの戦略予備を20万人ほど保有してからになる。

敵基地攻撃能力

 自衛隊が長射程ミサイルを保有すると敵基地攻撃能力と反撃能力を持つと反発した。これだけで中国は軍縮規模以下の自衛隊を恐れる原因になる。何故なら戦争は、3000年の戦争史を見ると弓矢・砲撃・ミサイルなどの火力攻撃だけで勝利した戦例はない。

 弓矢・砲撃・ミサイルなどの火力攻撃で敵を拘束し撹乱する。騎兵・戦車は火力攻撃で拘束した敵主力を側面から攻撃する。最後に歩兵が突撃し敵軍を撃破した後に土地を占領することで勝利する。このため常に歩兵が土地を占領しなければ勝利できないのは、兵科の機能で占領機能を持つのは歩兵だけだから。

・兵科の機能
・歩兵:正面攻撃・占領機能
・騎兵:側面攻撃
・砲兵:正面防御

 軍事の基本から見れば中国が日本侵攻・台湾侵攻を行うことは可能だが、必ず占領機能を持つ歩兵を日本・台湾に上陸させなければ勝利できない。このため日本は数に勝る中国軍と正面から戦えば敗北する。さらに命中精度が高い長射程ミサイルを保有しても早い段階で尽きることになる。

・海洋戦略=目的(制海権の獲得)・手段(敵艦隊+敵基地ネットワークの破壊)・方法(艦隊と基地ネットワークの造成)

・制海権=艦隊+基地ネットワークの継続利用。
・制空権=戦闘機隊+基地ネットワークの継続利用。

 3000年の戦争史を見ると経験則から戦略の中身は目的・手段・方法だと判明した。さらに制海権と制空権は基地から戦場までの継続的な優先利用で獲得できる。このため敵軍を直接攻撃するよりも敵基地を破壊するか占領することで敵軍の手段を奪うことが可能。

 第二次世界大戦中に日本海軍はソロモン諸島ホニアラに飛行場を建設した。しかしアメリカ海兵隊が占領しヘンダーソン飛行場に改名された。アメリカ軍は日本軍から手段を奪いアメリカ軍は方法を獲得した。手段を奪われると戦略が成立せず、日本海軍がヘンダーソン飛行場の破壊を試みるも制空権をアメリカ軍が獲得していたため成功しなかった。

 このため自衛隊が長射程ミサイルで中国軍の地上部隊を送り出す基地を破壊するだけで、中国軍は日本侵攻・台湾侵攻を不可能にできる。長射程ミサイルで中国軍のミサイル発射基地を破壊することが理想だが、固定式ミサイルは破壊できてもトレーラー・艦船・航空機・潜水艦を用いた移動式ミサイルを全て破壊することはできない。

 日本と台湾に好都合なことに、地上部隊を送り込む基地は固定式。このため港湾施設を破壊することで中国軍の手段を破壊できる。さらに港湾施設を破壊されたら中国海軍の艦船を修理できない。そうなると数に勝る中国海軍は段階的に戦闘を縮小していく。これは中国空軍も同じで、基地支援能力を長射程ミサイルで攻撃することで可能になる。

日本から侵攻するわけではない

 中国は「この脅威」を理解しているから自衛隊が長射程ミサイルを保有したことを怒ったのだ。日本から中国に侵攻する必要はないから、長射程ミサイルを航空機・艦船・潜水艦から発射することへ拡大していけば良い。

 何故なら地上から長射程ミサイルを発射する能力は沿岸砲の概念。日本に接近する航空機・艦船を攻撃できても有力な敵基地がなければ無価値になる。だが航空機・艦船・潜水艦から長射程ミサイルを発射するなら日本の継続戦闘が得られ、さらに複数同時からの攻撃になるから中国から見れば対応が難しくなる。

 地上から長射程ミサイルを発射すると攻撃軸は明白。だから中国は迎撃が容易になるが、航空機・艦船・潜水艦からの攻撃になれば対応が困難になる。これだけでも自衛隊は防衛力が強化されるだけではなく選択肢が増えることになる。

 中国軍は固定式の長射程ミサイルを撃破できても生き残った航空機・艦船・潜水艦が中国の基地に反撃できる。この反撃能力こそが自衛隊が中国軍から手段を奪うことになり日本侵攻・台湾侵攻を困難にさせる。だから効率の良い防衛強化になるから中国は日本の長射程ミサイルを批判した。ならば自衛隊は航空機・艦船・潜水艦から運用できるように拡大すれば良い。なによりも護衛艦“ちょうかい”は巡航ミサイル・トマホークを運用できるように改修された。このまま拡大すれば質で中国軍に対抗できる。それだけ中国が批判するなら効率の良い選択と言える。

(この記事はオンライン版の寄稿であり、必ずしも本紙の論調と同じとは限りません)

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