
中国では新型コロナウイルスの流行以降、若者を中心に消費スタイルに変化が起きた。コストパフォーマンスの高いものを求める傾向が見られるようになり、財布のひもが固くなった。高い失業率などを背景にした節約志向による需要の弱さから供給過剰が起きており、デフレ圧力が強まっている。(宮沢玲衣)
中国のSNSでは、日々の生活でどれだけ節約できたかや、日常に幸せを感じるといった投稿が多くの共感を集めている。中国人は海外ブランド品を好み、どれだけきらびやかな生活を送っているかを競うというイメージが強かっただけに、消費スタイルの変化を感じる。
中国では外食文化が根付いているが、杭州に住む30歳の女性は節約のために毎日、帰宅後に自炊をしている。「普通の人が不確定な未来に備えるためには貯金が唯一の方法だ」と話す。女性の友人は、ここ数年でリストラや減給に遭ったという。いつ稼げなくなるか分からない危機感が貯金を後押ししているのだ。
中国では2020年から始まったコロナ禍以降、消費スタイルの変化が顕著になっている。感染拡大を阻止するため中国当局は、感染者がいる地区を封鎖するなど、数年間にわたり非常に厳しい措置を取った。外出が突然制限され、仕事に行けない、店の営業を続けられないといった人々が続出し、収入が急に途絶えるという経験をした人は多い。
沈静化した現在でも「後遺症」はあり、人々の財布のひもはコロナ禍前よりも固くなった。消費者心理を示す消費者信頼感指数は25年11月が90.3ポイントで22年以降、平均値の100を下回ったままで悲観的であることを示している。また、物品を購入する際、海外製から安い国産品に変えたり、高級レストランでの食事を安い店に変えたりなど、意識的に節約をする「消費降級」も目立つ。その影響もあってか、世界的に有名な台湾小籠包のレストランチェーン「鼎泰豐(ディンタイフォン)は中国北部市場からの全面撤退を昨年発表した。中国でカフェ文化の火付け役となり、人気のあったスターバックスもフラペチーノなど数十種類の飲料の値下げを行った。それでも、半分以下の価格で商品を提供する中国発のブランドもあり、苦戦している。
中国では不動産の購入条件の緩和や金利の引き下げ、設備の更新、消費財の買い替え推進など、政策や対策が打ち出されたが影響は限定的だ。
こうした中、中国共産党は先月、中央政治局会議を開き、内需拡大を重視する方針を表明した。今年の経済運営方針が内需拡大であることを示しているが、企業の業績悪化と倒産・リストラの拡大などの問題は依然として大きい。国家統計局が公表した昨年11月の若年層の失業率は16.9%だが、実態は40%以上とも言われており、先行きの見えない中でどれだけ消費が拡大するかは不透明だ。
中国は供給サイドを牽引(けんいん)役にして拡大を続けているものの、それが過当競争へとつながり社会問題となっている。内需不足などにより、物価が下がり続けるデフレ圧力は今後も継続する見込みだ。中国企業が国内の余剰在庫や製品を低価格で海外市場に流通させる「デフレ輸出」を行えば海外企業も価格競争に巻き込まれるだけに、世界経済にとっても中国の深刻なデフレはリスクになる。






