トップ国際中国【連載】2026世界はどう動く(4) 中国 習氏「紅」路線で増す脅威

【連載】2026世界はどう動く(4) 中国 習氏「紅」路線で増す脅威

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2025年3月、北京の人民大会堂で、全国政治協商会議の閉幕式に出席する中国の習近平国家主席(中央)ら(AFP時事)

 不動産バブルの破裂で中国経済は低迷を余儀なくされている。内需は相当冷え込み、辛うじて維持している外需で経済の底抜けを免れている状況だ。

 追い打ちをかけたのが、トランプ米政権の関税戦争だった。メンツの国中国は、売られた喧嘩(けんか)で膝を屈することを嫌った。中国は対抗関税とレアアース(希土類)などの輸出規制で抗(あらが)ったが、早く米国と手打ちをしたいというのが本音だ。その意味では4月にトランプ大統領を北京に迎えて行われる米中首脳会談と、その後の習近平国家主席訪米へ期待をつなぐ。

 とりわけ中国が避けたいと思っているのは、日米欧の資本逃避だ。これまで中国経済を浮上させてきた主役は、海外からの投資であり技術移転だった。わけても日本企業は、上っ面の金稼ぎではなく製造業で現地経済に貢献してきた実績がある。現地の人々を多く雇用しただけでなく、技術移転も進んだ。

 辛うじて維持している外需は、急増した東南アジアで回っている現状がある。これらの地域へ輸出されるモノは、完成品だけではなく原材料や1次加工品なども多く含まれる。つまり米国から狙い撃ちされた中国製品輸出の大幅な下振れを防ぐため、中国は製造拠点を東南アジアに移しつつあった。その迂回(うかい)輸出が昨年、米国と東南アジア諸国との関税協議で封じられた。具体的には「原産地証明の厳格化」と「第三国からの積み替え輸出品」に40%の高関税を課すというものだ。

 なお中国現代史を俯瞰(ふかん)する上で、軸となるのが「紅専」史観だ。1949年に建国された共産党政権による中華人民共和国は、毛沢東が主導した大躍進時代や文化大革命の混乱と疲弊の時代の30年を経て、鄧小平による「改革・開放」時代の30年を迎えた。

 つまり、中国の現代史は共産主義化を急速に進めようとした毛沢東の「紅」路線と、現実に即して経済の効率を高めようとした鄧小平の「専」路線と総括できる。建国約60年後に登場した習近平総書記は、「専」路線から毛沢東の「紅」路線への回帰を目指す。

 鄧路線の「専」時代には、目に見える経済発展で人々の生活の質の向上が鮮明だった。人々は生活実感を伴った豊かさから共産党政権を支持した。習近平政権は、失業者増大を伴う経済的困難と共産党政権に対する求心力低下を払拭するため、引き締めと弾圧の強化に動きだしている。

 行き着く先は、秘密警察が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する抑圧と恐怖による強権統治だ。そして、求心力強化のために台湾併合というカードをいずれ切ることが懸念される。そうした中国の左旋回に、西側世界は備える必要がある。中国の経済が危うくなると、周辺地域の平和は脅かされてくる。

 その習氏は年頭所感で「祖国統一という歴史の流れは止められない」と述べ、台湾併合への決意を改めて表明した。

 警戒すべきは11月に行われる台湾統一地方選への中国の介入だ。台湾全22県市の首長選と議会選が一斉に行われる統一地方選こそは、28年1月の総統選の前哨戦となる。孫子の兵法の国・中国は、武力を用いた戦争による勝利ではなく、「戦わずして勝つ」ことを上策とする。

 中国が「台湾独立」派と見なしている民進党の頼清徳総統の再選を阻止し、「親中的」な国民党政権樹立に向けた本格的な工作が始まるのは統一地方選だ。

 中国がまず狙ってくるのは、台湾の方から統一を求めてくるようにさせる熟柿(じゅくし)作戦だ。

(池永達夫)

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