トップ国際中国中国共産党の高市首相に対する恐れと人民解放軍の正体

中国共産党の高市首相に対する恐れと人民解放軍の正体

戦争学研究家 上岡龍次

訓練中の人民解放軍
訓練中の人民解放軍

高市首相と中国共産党の反発

 高市首相が台湾有事は“存立危機事態”になり得ると国会で発言すると、中国共産党の大阪総領事である薛剣氏は「その汚い首は斬ってやるしかない」とXに投稿して国内外で騒ぎになる。大阪総領事のXの投稿はアメリカとヨーロッパで批判の声が出たが中国共産党は無視した。

 中国共産党の怒りは収まらず高市首相を人民日報で「日本が台湾海峡に軍事介入するたくらみと野心をさらけ出した」と批判した。さらに高市首相が発言を撤回しなければ「一切の結果は日本側が負わなければならない」と日本側に警告する。

 中国共産党は人民に対して日本への渡航自粛を呼びかけ、さらに日本で生活する中国人留学生の安全を求める要求まで行った。だが日本国内では中国からの入国が減少することを歓迎する声が多く、中国共産党の思惑とは別の結果に至っている。

中国共産党が反発する理由

 高市首相が台湾有事を存立危機事態と発言すると中国共産党は過剰に反応した。これは台湾有事になると日本とアメリカが集団的自衛権を発動し参加すると見なしたからだ。大陸国家中国は海洋進出するには台湾・沖縄を占領しなければならない。さらに中国が完全に太平洋に進出するには台湾・沖縄・九州・本州・北海道を完全に占領する必要がある。

「日本のたくらみと野心を曝け出した」 中国共産党機関紙・人民日報が高市首相発言を批判
https://www.sankei.com/article/20251114-5QDEG23HSBITDEYLHW5DRWUPQE/

 中国は高市首相を「日本のたくらみと野心を曝け出した」と批判したが、これは「中国共産党のたくらみと野心を曝け出した」ことを意味する。中国共産党の戦略は台湾・日本に置かれているから、日本が台湾を防衛するなら中国共産党の戦略を拒絶することを意味する。だから中国共産党は過剰に反応する。
 
・北太平洋の管制 :横須賀・佐世保・ミッドウェー島
・中部太平洋の管制:グアム・マニラ
・西太平洋の管制 :沖縄・台湾

 制海権を獲得する基準を言えば、中国共産党が西太平洋に進出するには台湾と沖縄の占領が必須。次に沖縄から九州に進出し占領する。さらに本州と北海道を占領することで北太平洋に進出できる。これらが基地から継続的に太平洋まで艦隊を往復することで制海権を獲得できる。

人民解放軍の正体

 中国の人民解放軍は2000年代に入ると急速な近代化と軍拡路線を選んだ。これで中国共産党と人民は人民解放軍の強力さを自慢するに至った。だが中国共産党は台湾・日本・アメリカを軍事力で脅すが実行には至らない。

 イッソスの戦い(333BC)の後にペルシャのダリウス三世はアレキサンダー大王に対して講和を求めた。アレキサンダー大王はダリウス三世の講和を拒絶して「ペルシャを解放する」と宣言した。これ以後から白人世界では「解放とは征服するための口実用語」になった。では人民解放軍の解放とは何だ? この場合は“人民征服軍”が真の意味になる。

 人民解放軍は国家の軍隊ではなく共産党の私兵。基本的な国家の軍隊は地方分権方式だが人民の反乱対策が目的の人民解放軍は中央集権方式を採用している。このため中央の北京から人民解放軍が各省へ直接配置される。
 このため北京付近に陸海空の生産・整備基地が置かれ、他の省に置かれている生産できる基地は中央直轄になっている。何故なら現地の省には生産できる基地・設備を与えない。仮に現地の省に渡せば現地の省の戦力になる。

 中国共産党は地方の省が反乱を起こすことを恐れている。だから兵器生産・大規模整備は北京付近に置いておき、各省には中央直轄で直接管理している。人民解放軍の数は多いが裏の顔は地方の反乱対策が目的。だから中国共産党は高市首相の台湾有事発言を恐れる。何故なら日本・台湾と戦争になると地方の省が反乱を起こすかもしれない。この恐怖が中国共産党の悩みだ。

人民解放軍の弱点

 人民解放軍は人民の反乱対策が目的だから北京を拠点として中国各地に直接置かれている。だから基地配置も海外遠征を前提とした基地配置になっていない。海外遠征を前提にしている軍隊はアメリカ軍が典型例。他の国はアメリカ軍よりも劣る遠征能力になる。では日本は? 自衛隊は政治家の国防軽視が続いたので遠征能力は台湾までが限界。

・人民解放軍海軍は太平洋に進出するには黄海を必ず通過しなければならない。
・人民解放軍の陸海軍の重要な基地は北京付近に存在する。
・中国共産党が最も恐れるのは地方の反乱。このため地方には直轄方式の基地を置いている。

 人民解放軍には上記のような致命的な弱点がある。さらに人民解放軍海軍は原子力潜水艦を保有し、中国沿岸部に海軍基地を置いたが軽整備しかできない。これは原子力潜水艦には致命的で、常に黄海を通過して渤海まで戻らなければならない。

 これは人民解放軍海軍の空母艦隊も同じで、大規模整備を行うにしても黄海を通過しなければならない。このため、仮に日米海軍が黄海に機雷を敷設すると人民解放軍海軍は太平洋への進出ができない。高市首相が台湾有事を口にしたことで、中国共産党は高市首相が黄海封鎖命令を出すと思ったのだろう。

台湾有事は日米の有事そして盾と槍

 台湾はインド洋と太平洋の間のバシー海峡の門柱に該当する。このため中国共産党が台湾を占領すると日米が使う海上交通路を遮断する。このため台湾有事になると国益優先でアメリカが参戦することは間違いない。

 アメリカのニクソン大統領は1969年7月に「同盟国またはアメリカの安全保障に死活的に重要な国が核保有国から戦争を仕掛けられたらアメリカは防御として盾(核の傘)を提供する。しかし攻撃の槍は第一義的にその国の責任である」とした。そして今も続くアメリカの国防方針の基本だ。

 日本では何故かアメリカが攻撃の槍であり日本は防御の盾だと言われている。だが実際はアメリカは核の傘を用いた防御の盾であり日本は攻撃の槍を担当する。これは核保有国が日本に戦争を仕掛けたらアメリカが核の傘で日本を守り、日本が台湾有事で台湾を防衛することを意味している。

 核保有国が日本を通常弾頭で攻撃すると、アメリカは日米安全保障条約を適用し直接軍事行動を行う。このアメリカの考えを理解しなければ中国共産党の恐怖を理解できない。アメリカの核の傘が防御の盾になるのだから日本は核保有国である中国と戦える。この事実に日本人が気付くと中国共産党が核で恫喝しても効力を失う。

 さらに日米軍が集団的自衛権を適用して台湾防衛を行えば人民解放軍の弱点が曝け出される。だから中国共産党は異常に高市首相を恫喝し譲歩させようとしている。戦争か平和を選べ、戦争が嫌なら譲歩しろと迫る。ならば高市首相は無視すれば良い。これだけで中国共産党の面子を潰せるからだ。

(この記事はオンライン版の寄稿であり、必ずしも本紙の論調と同じとは限りません)

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