
中国国内で当局に拘束された、同国最大規模の政府非公認プロテスタント系の「シオン教会」創設者、金明日(ジン・ミンリー)牧師の長女グレイス・ジン・ドレクセルさんが本紙の取材に応じた。今月9日以降、金氏を含む約30人の教会指導者が拘束されたことを巡り、オンラインによる説教の配信が罪とされるなど、宗教弾圧が強まっていると強調。30日に米中首脳会談(場所は韓国)を控える中、トランプ政権による外交圧力に期待を示した。(ワシントン山崎洋介)
シオン教会は2007年に北京で設立されたが18年、当局の弾圧を受けた。グレイスさんは「当時、教会は強制的に閉鎖され、資産や礼拝堂が押収。それでもオンライン、対面のハイブリッド形式で父は活動を続け、会員数が1万人になるまで全国の都市に広がった」と説明した。
現在も金氏を含め23人が拘留所に収容されているという。「全員に『オンラインでの違法な情報流布』という、新しい罪名が適用されている。政府管理下の『適切な配信経路』を使っていないとして、オンライン説教を行うだけで、犯罪者とみなされる」とグレイスさんは訴えた。
金氏らの拘束を受け、米国務省は12日、全員の即時解放を求める声明を発表した。またテッド・クルーズ上院議員は、中国共産党によるクリスチャンへの迫害に対する、非難決議案を主導している。また米人権団体「対華援助協会(チャイナエイド)」のボブ・フー(傅希秋)会長は、「中国都市部の非公認教会への、過去40年余で最も大規模かつ組織的弾圧」と批判している。
グレイスさんは、拘束中のメンバーは高齢者が多く、持病も抱えているが、医師の処方薬服用が許可されていないケースがあり、懸念を示した。グレイスさん自身と2人の兄弟は米国市民であるとし、「米国第一」政策を掲げるトランプ政権が、「米中首脳会談などで、父の事件を引き続き、取り上げてほしい」と語った。
27日に米非営利団体「共産主義犠牲者追悼財団」が主催する米首都ワシントンでの会合に出席、「父は海外移住への機会が何度もあったがその都度、危険を承知で中国に戻り、宣教することを選んだ。そのような信仰こそ、中国が恐れるものだ」とグレイスさんは強調した。23人が起訴され、正式に逮捕されるまで今後、約20日の猶予がある。今が働き掛けができる機会だとして支援を呼び掛けた。





