トップ国際中国年金制度で世代間対立  中国 急激な高齢化で出口見えず  10年後に枯渇予測も 【ワールドスコープ】

年金制度で世代間対立  中国 急激な高齢化で出口見えず  10年後に枯渇予測も 【ワールドスコープ】

たき火を囲む中国の高齢者=2024年1月、中国貴州省(時事)
たき火を囲む中国の高齢者=2024年1月、中国貴州省(時事)

 世界でも類を見ないほど急激に高齢化が進む中国では、経済の低迷が重なり、年金制度の存続が危ぶまれている。年金保険料の重い負担や制度破綻の懸念から年金の支払いを拒否する人々が増加。年金制度が世代間対立の一因にもなっている。(宮沢玲衣)

 「2035年に資金が枯渇する」――。

 政府系シンクタンク中国社会科学院が2019年に発表した推計が中国社会に波紋を呼んだ。中国の年金制度は、基本養老保険、企業年金、個人年金の三つで構成されている。その中の基本養老保険は大きくは、都市部の就労者が加入する「城鎮職工基本養老保険」と農村部の住民や非就労者が加入する「城郷居民基本養老保険」に分けられる。中国社会科学院は人口構成の急激な高齢化により、前者の年金積立金が27年をピークに急減し、いずれ底を突くと発表した。

 城鎮職工基本養老保険は企業と個人がそれぞれ保険料を収める。企業側が支払った保険料は現役世代の保険料を蓄え、それを高齢者に給付する賦課方式。個人負担分は個人口座に積み立てる制度になっているものの、財政難から個人口座の資金が賦課方式の側に流用される問題も起きている。

 中国政府は年金資金の運用収益を増やすためにより収益性の高い投資や、労働人口を確保するための定年年齢引き上げなどを行うが、定年引き上げに対しては国民が強く反発。当初は65歳に引き上げるとしていたが、15年かけて段階的に引き上げられることになった。今年1月には男性は60歳から63歳、女性は幹部が55歳から58歳、それ以外が50歳から55歳へ、それぞれ変更された。

 ただ、中国の「一人っ子政策」などにより、急速な少子化と高齢化が進んでおり、現在の対策では年金の財源不足を解決するには不十分だ。そのため「定年後に年金制度がまだあるかどうか」という若者からの不安を耳にする機会が増えた。中国社会保障学会が昨年11月に発表した報告書によると、年金保険の納付率は11年の85・2%から22年の80・8%に低下した。

 若者が保険料の支払いを拒否する背景には、低迷する経済や雇用への不安がある。公務員や軍人に対する年金が優遇されていると不満を感じる国民も少なくない。学生の間で「卒業=失業」と冗談交じりに言われるほど中国の若者の就職状況は厳しく、中国国家統計局によると今年7月の学生を除いた16~24歳の若者の失業率は17・8%。25~29歳では6・9%となっている。

 近年の低迷する経済から、リストラへの不安も大きい。また、35歳以上では転職も難しいとされる。中国のSNSでは「35歳は働くには年を取り過ぎと言われ、60歳だと引退するには若過ぎると言われる」と嘆く投稿が共感を呼んでいる。

 中国都市部の就労者が支払う年金保険の保険料率は企業16%、個人8%であり、中小零細企業や一部の低所得者層にとっては大きな負担となっている。企業によっては労働者と、手取り収入を増やす代わりに保険に加入しない契約を締結するケースもあり、これも年金が資金不足に陥ることに拍車を掛けた。これに対抗してか中国の最高裁は今年8月1日、「社会保険を納めないあらゆる約定は全て無効」との解釈を示し、9月から施行された。

 保険料支払いへの強制力をさらに強めても、中国の年金資金不足の根本的な要因である人口構成は変わらない。日本でも少子高齢化による年金問題はあるが、中国の高齢化のスピードは日本を上回る。国連は、34年に中国の人口の21%以上を65歳以上が占める「超高齢社会」へ突入すると予想。現役世代の負担が大きくなるのは必至だ。北京市などの大都市では、過去に優遇された公務員や国有企業出身の年金受給者が、若者の給与を上回る額を支給されている例もあり、世代間対立を生む一因にもなっている。

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