
世界のキリスト信者の迫害状況を発信してきた非政府機関、国際宣教団体「オープン・ドアーズ」は15日、ウィーンで報道向けのステートメントを発表し、「中国共産党政権が今月初めから中国での外国人の宗教活動をさらに厳しく取り締まる法を施行し、中国当局の宗教統制政策は『新たな次元』に引き上げられている」と主張した。
オーストリアの「オープン・ドアーズ」のカート・イグラー事務局長は「施行された法律は、中国における外国人によるキリスト教の証しや布教活動のほとんどを事実上犯罪化するものだ」と指摘し、「中国政府がキリスト教のあらゆる表現を統制、あるいは根絶しようと決意していることを示す最新の兆候だ」と語った。具体的には、中国共産党政権は外国人宣教師による説教、伝道、その他の宣教活動を禁止し、教会の礼拝に参加するにも政府の許可が必要となる。
新法は正式には「外国人の宗教活動に関する管理規則」と称されている。オープン・ドアーズによれば、説教、共同宗教活動、布教活動など、中国の宗教団体や機関との単なる交流にも政府の許可が必要となる。外国人は、個人的な使用を目的としない聖書やキリスト教の文献を正式な許可なく持ち込むことが禁止される。
規則に違反した外国人は国外追放、罰金、あるいは刑事訴追の対象となる。新しい規則は、外国人キリスト教徒が公式ルートに従わない限り、中国で個人的に信仰を実践することを事実上禁止している。許可が下りることは稀で、キリスト教の活動は政府公認の教会を通じて行われなければならないわけだ。
中国共産党政権による宗教弾圧は長年、実施されてきたもので新しいことではないが、「今回の規制はその次元をさらに高めた」というわけだ。中国のキリスト教徒は、国家公認の「愛国」教会に加入するように強いられている。家庭教会は捜索され閉鎖され、聖書は検閲され、牧師は投獄される。
ちなみに、オープン・ドアーズによると、フランシスコ教皇の逝去とレオ14世教皇の選出の間の空位期間に、中国当局は上海と新郷で2人の新しいカトリック補佐司教を一方的に任命している。この動きは、司教任命に関する中国とバチカン間の2018年の合意に反している。
ローマ・カトリック教会の総本山バチカンと中国共産党政権は昨年10月22日、両国間の司教任命権に関する暫定合意を4年間延長すると発表したばかりだ。バチカンと中国政府は18年9月に司教任命の手続きに関する暫定合意を締結したが、同合意は2年間の有効期限が設定されており、20年と22年に延長されてきた。そして今回、両者はその有効期限を倍の4年間に延長することで合意した。なお、この合意の正確な内容は引き続き非公開となっている。
バチカンは毛沢東が1951年、バチカンの最後の外交官を国外追放して以来、中国とは国交関係がない一方、台湾とは外交関係を維持している。なお、中国外務省は両国関係の正常化の主要条件として、①中国内政への不干渉②台湾との外交関係断絶―の2点を挙げてきた。
中国では58年以来、聖職者の叙階はローマ教皇ではなく、中国共産政権と一体化した「中国天主教愛国会」が行い、国家がそれを承認してきた。一方、ローマ教皇に信仰の拠点を置く地下教会の聖職者、信者たちは弾圧され、尋問を受け、拘束されてきた。その期間が長く続いた。
バチカンは司教任命権を主張し、「天主教愛国会」任命聖職者の公認を久しく拒否したが、2018年9月22日、中国側の強い要請を受けて、愛国会出身の司教をバチカン側が追認する形で合意した経緯がある。
フランシスコ教皇は昨年9月13日、中国側との対話について、「私は中国との対話に満足しており、その結果は良い。特に司教の任命についても、私たちは善意を持って協力している」と満足を表していた。それに対し、欧米諸国ではバチカンの中国共産党政権への対応の甘さを指摘する声が絶えない。
ローマ・カトリック教会で今月8日、新教皇レオ14世が誕生した。それを受け、中国外務省の林剣副報道局長は9日の記者会見で、「バチカンが建設的精神で中国側と対話を継続し、関係改善を共に推進するよう望む」と述べ、新教皇に祝賀を送っている。中国側の狙いはバチカンが台湾との国交を断絶し、中国共産党政権との国交を締結することだ。
イグラー事務局長は「中国のキリスト教徒は世界中の教会から孤立し、監視と統制が強化されている。国際社会はこれに目をつぶってはならない」と訴えている。
中国共産党政権の習近平国家主席は2012年に権力を掌握した後、「宗教の中国化推進5カ年計画」(18~22年)を実施した。「宗教の中国化」とは、宗教を中国共産党の指導の下、中国化すること(同化政策)だ。それは新疆ウイグル自治区で実行されている。100万人以上のイスラム教徒が強制収容所に送られ、そこで同化教育を受けている。キリスト教会に対しては官製聖職者組織「天主教愛国会」を通じて、キリスト教会の中国化を進めている。