トップ国際中国習政権、民間企業支援へ転換  「国進民退」成長の足かせに 中国

習政権、民間企業支援へ転換  「国進民退」成長の足かせに 中国

17日、北京の人民大会堂でアリババ集団の創業者である馬雲氏(左)と握手する習近平中国国家主席=CCTVから
中国の習近平政権はこれまで国有企業を重視し、民間企業の統制強化を進める「国進民退」路線を進めてきた。3月5日開幕の全国人民代表大会(全人代=国会)を前に習氏自ら大手民間企業トップらとの座談会に出席し、経済成長率を下支えする民間企業重視の「民進国退」路線に変わるスタンスを見せている。(南海十三郎)

17日、習近平国家主席は北京市内で大手民間企業トップらと座談会に出席した。習氏が民間企業との座談会を開くのは第1回の2018年11月1日、第2回の20年7月21日に次ぐ4年半ぶり。国営中央テレビ(CCTV)は速報を伝え、第1回の座談会から6年ぶりと報じている。

中国を代表する起業家で中国ネット通販最大手のアリババ集団創業者、馬雲(ジャック・マー)氏や通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)創業者の任正非(レン・ジェンフェイ)最高経営責任者(CEO)、中国ネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)の馬化騰(ポニー・マー)CEO、自動車大手の比亜迪(BYD)の王伝福董事長、スマートフォン大手の小米(シャオミ)の雷軍CEOらが参加。さらに生成AI(人工知能)で一躍注目された新興企業ディープシーク(深度求索)創業者の梁文鋒氏、ロボット開発大手の宇樹科技の王興興CEOら民間企業大手トップがそろい踏みした。

習氏は座談会で「民間企業と起業家が発展する未来は広大で潜在力は大きい。中国式現代化のために活躍できる先富共有の時を迎えた」と述べ、「中国共産党と政府各機関は民間経済が発展するために政策や措置を実行していかなければならない」と民間企業支援を強化する姿勢を明確化した。

特に「市場競争への公正な参加を阻むあらゆる障壁を断固として取り除く」と民間企業への不当な請求や罰金を廃止し、公平な競争を促進することを約束。全人代でも民間経済の促進法案を見直す動きとなっている。座談会には習主席以外に李強首相、丁薛祥副首相、王滬寧全国政治協商会議主席も参加する重視ぶりだ。

中国の24年国際収支を見ると、外資企業の直接投資はピーク時の21年と比べて99%減(中国国家外貨管理局2月14日発表)。不動産不況で深刻な内需不足による経済減速やスパイ摘発への懸念で外資の中国離れが加速している。24年の対中直接投資は45億㌦(約6800億円)の流入超過で33年ぶりの低水準。「国進民退」が経済成長の足かせとなっている。

習指導部は、国有企業を主軸にハイテク分野での技術革新から経済成長を見込もうとの共産主義イデオロギーによる国有企業優遇策を打ち出してきたが、生産性が低迷し、いよいよ方向転換に迫られた状況だ。国有企業による既得権益層の抵抗はなお根強く未知数。

今回、注目されたのは、政府のネット業界での厳しい統制に直面していたアリババ集団創業の馬雲氏の動向だ。20年10月、上海での政府要人が出席した会合で「政府の金融規制は技術革新の足かせで改革が必要」「中国の銀行は質屋程度の感覚で営業している」と過度な政府批判を行ったことでアリババ集団傘下のアントの上場が延期となり、21年4月にはアリババが独占禁止法違反で182億元(約3800億円)の制裁金が科され、締め付け強化の代表格だった。馬雲氏は22年から家族と東京に滞在し、東京大学客員教授を歴任。中国政府は帰国要請し、23年3月に一時帰国後、当局の対応が変わったとされる。

馬雲氏が政府主催の会合に参加するのは珍しく、習主席に拍手したり、握手するシーンもCCTVの映像で紹介された。香港株式はアリババ集団の株価が1月末比で約4割急上昇、ディープシークの台頭でAI関連銘柄が急騰し、海外マネーが戻り、活況だ。

民間企業の締め付けと緩和で中国共産党がどこまで「民進国退」路線に切り替わるか、党益、国益が民間益に優先する中国式の経済成長のジレンマは続きそうだ。

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