こんにちは、元・中国人、現・日本人の漫画家の孫向文です。
●中国の罠に騙される投資家たち
この2〜3年で、日本の投資家が海外株取引や新NISAの積立で必ず購入する銘柄と言えば、今や急成長を続ける米半導体メーカー・エヌビディア(NVDA)ではないでしょうか?
しかし1月29日になると、エヌビディアの株価が140ドル台から117ドル台まで急落しました。
その理由は中国の格安AI(人工知能)「ディープシーク(DeepSeek、深度求索」の発表があったからです。
きっかけは中国AI企業がディープシークを開発するためにかけた開発費がたったの600万ドルだったことでした。しかも「全米のどのAIより強力なAIだ」と豪語していました。
その意味は、「米国テック企業はAIを開発するために資金を注入しすぎで、もしかしたら投資詐欺ではないか」と露骨に米国AIに挑戦していると考えられます。
こうして、中国の実情にあまり詳しくない投資家たちは、「本当に米国のIT企業に騙されたのではないか」と、不安になって、エヌビディアの株をたくさん売却した、というのがことの顛末のようです。
そして、戻った資金で将来、ディープシークを大量に購入する「愚か者」の投資家もいるかもしれません。実際、ディープシークは、2023年に設立された中国のAI企業にすぎず、現在も未だ非上場の民間企業です。
親会社である幻方(High-Flyer)がディープシークの分離上場を計画しているとの報道もありました。
ただ、著作権侵害をしたとして、上場自体が頓挫する可能性もあります。
●盗用は中国の十八番
エヌビディアのために半導体の一部を下請け製造する台湾のTSMC(TSM)も急落しました。アップル以外の(アップルはAIを独自開発)AI関連株も全体的に下げました。
確かに、今まで高騰し続けていたAI分野の株価にバブルの要素が多いことは否定できませんでしたが、中国が主張するように僅か600万ドルで米国全体のAI技術を凌ぐようなAIができたというのは事実ではありません。
中国のことをよく知っている方ならわかるかもしれませんが、中国は、欧米、日本の技術を盗用し、自社開発費を浮かせ、あたかも「自社開発」の製品を非常に廉価で先進国に押し売りし、先進国と競争するというのが十八番です。
筆者は、今回もやっぱりそうではないかと邪推し、思わずNVDAとTSMの株をまだ安価な時に大量買いしました。そして、調査してみたところ、以下のような情報を見つけました。
まずはAIに関してざっくり説明しておきましょう。
AIを開発するために、①AIの計算能力を高める専用の半導体(ハードウェア)とAIのソースモデル(ソフトウェア)、および人間社会から情報を集めて、それを②AIに勉強させ、さらに③AIをより人間らしく賢くする、という3ステップが必要となります。
特に3番目については、14億人の人口を持つ中国、しかも中国共産党は許可なく勝手に、もしくはこっそりと通知することもなく、ネットユーザーの会話や個人情報を収集しています。
そのため、AIの進歩速度は確実に世界のどの国をも簡単に上回ることができというわけです。
ところが、①と②は中国にとって難関となります。でも、自社開発という名目で実際は米国製の半導体とソフトを使用することで、簡単にクリアできます。
外向けにはメーカー名を抹消して、中国自社のロゴをつけて、簡単に欺くことができます。
その実例は挙げれば、山程あります。例えば30年前から中国が自称「自社開発」としている国産パソコン用CPU「龍芯」はIntelの製品であり、発表会でCPUをクローズアップする際に写った中国国産CPUは、実はIntelのロゴを消して、中国独自のロゴをプリントしただけの「自社開発」でした。
そして10年前くらいに、米政府はスパイウェア疑惑を抱いて、中国・華為技術(ファーウェイ)端末へのAndroidのライセンスを停止したため、華為はその対策として自称自社開発OSを搭載したと宣言しましたが、中国人のSEたちは「ファーウェイの独自OSであるHarmonyOS(鴻蒙OS)はAndroidから魔改造したものだ」と暴露。
更にファーウェイのOSから「Android」の文字列を簡単に発見することができました。こうしたIT先進国から勝手に技術を盗み取り、「自社開発」「完全国産」と宣伝するのは、いかにも中国らしいと言えます。
今回はどうでしょう?
以下はネット上からある日本人SEの情報を引用しました。
ディープシークに「あたなは何というモデルですか?」と質問すると
「私の名前はGPT-3.5-turboです。私はOpenAIが開発した大規模言語モデルで、2023年7月時点の技術に基づいています。ユーザーからの入力を理解し、質問に答えるための高度な自然言語処理能力を持っています。ただし、最新の情報やリアルタイムデータにはアクセスできませんのでご了承ください。」
と答えたとのこと。
いとも簡単にAI自身が「嘘」を暴露してくれたのです。ディープシークはChatGPTのモデルを盗み、中国人のネットユーザーの情報をAIに学習させたことで「自称中国製」のAIディープシークが誕生した、ということです。
マイクロソフトとOpenAIは、中国のAIスタートアップであるディープシークに関連するグループが、OpenAIの技術から生成されたデータを不正に取得した可能性について調査を進めています。
マイクロソフトのセキュリティ研究者は、2024年秋に、ディープシークとの関連が疑われる個人がOpenAIのAPIを使用して大量のデータを外部に持ち出していることを発見し、OpenAIに通知しました。
このような行為は、OpenAIの利用規約に違反する可能性があり、APIの制限を回避して大量のデータを取得した疑いがあります。
ディープシークは最近、無料のAIアシスタントをリリースし、米国のApp
StoreでOpenAIのChatGPTを上回る人気を博しています。この成功により、ディープシークがOpenAIの技術を不正に利用して独自のAIモデルを開発したのではないかとの疑惑が高まっています。
特に、ディープシークが「蒸留」と呼ばれる手法を用いて、OpenAIの高度なモデルから学習し、自社のAIモデルを強化した可能性が指摘されています。
OpenAIは、米国政府と協力して知的財産の保護と不正使用の防止に努めています。一方、ディープシークの最新AIモデル「R1」は、OpenAIのGPT-4と同様のジョークパターンを再現するなど、OpenAIの出力をトレーニングデータに使用した可能性が示唆されています。
この問題は、AI技術の知的財産権やデータの透明性に関する議論を引き起こしています。
中国のディープシークが発表した新しい人工知能モデルが、アメリカのシリコンバレーとウォール街に衝撃を与えました。
専門家はアメリカのボイス・オブ・アメリカ(VOA)に対し、ディープシークが低スペックのハードウェアと低コストで高品質な製品を生み出せた理由の一つは、「モデル蒸留(ModelDistillation)」にあると語りました。
また別の専門家は、「ディープシークが中国にとって“敏感な話題(天安門事件や習近平、共産党の批判など)”に対して厳しい検閲を行っていることが、このAIモデルを国際市場への進出させるうえで、障害になっている可能性がある」と指摘しています。
つまり中国政府にとって不都合な検閲を行い、中国政府の検閲を当たり前のようにすり抜ける中国製AIは、今後世界へ進出する可能性はゼロであり、すでに米国AIから手を引いて、大きな資金をディープシークに投資した世界中の投資家は愚か者しかいないということになります。
●近い将来中国の化けの皮が剥がれる
今後はハードウェア、半導体の輸出規制が関心事となり、中国がトランプ大統領に挑んだ結果が、もうすぐ見えてくるでしょう。
トランプ氏は、エヌビディアの中国向け販売規制をさらに強化することを協議しました。トランプ氏は、中国製のAIを叩き潰そうとしています。
このような盗用したAI技術なら、600万ドル程度の低コストでも確かに開発できるでしょう。
確かに今回の事件は、日本人の投資家が陥った自分のお財布の問題に過ぎません。
筆者の意見としては、中国の嘘は短期間でバレてしまうので、その際に中国製AIディープシークの信用が急落、上場失敗となり、エヌビディアやTSMCから手を引いた株主は巨大な損失が発生するのではないかと考えます。
今後、エヌビディアの株価が上がってくるでしょう。そのため現在は米国の半導体関連株を格安で購入するとても良いチャンスといえるかもしれません。
(この記事はオンライン版の寄稿であり、必ずしも本紙の論調と同じとは限りません)