トップ国際中国一国二制度の優等生目指すマカオ 返還25周年で習主席訪問へ

一国二制度の優等生目指すマカオ 返還25周年で習主席訪問へ

中国本土からの観光客でにぎわうマカオ 中心部の歴史地区 = 2019年12月19日、マ カオ(時事)

5年ぶりにマカオを訪問中の習近平中国国家主席は20日、ポルトガルからの返還25周年記念式典に参加し、マカオトップとなる岑浩輝(しん・こうき)行政長官就任式に出席して一国二制度が順調に推進していることを誇示する。脱カジノに苦悩するマカオは反政府活動が激しかった香港に比べ、「一国二制度の優等生」を目指し、広東省との連携で活路を見いだすが、前途は多難だ。(南海十三郎)

1999年12月20日、マカオが宗主国ポルトガルから中国に返還された当時、主要な公共交通網はバスだけだった。返還25年となり、大きく変わったのは、次世代型路面電車「マカオLRT」が導入され、3路線が完成したことだ。

延伸工事には三菱重工業も一部を受注し、引き渡している。広東省珠海市横琴新区との陸路の税関がある新駅「横琴駅」(地下駅)ができたことで隣接する珠海市との新たな出入境が整備された新路線は画期的。中国本土との往来が増え、依存度も高まっている。

一方、マカオと隣接する広東省珠海市では11月11日夜、62歳の中国人男性容疑者が車で体育施設の敷地内に侵入して次々と人をはねた。35人が死亡し、43人が負傷という史上最悪の車での殺傷事件。殺意は離婚協議への財産分与トラブルへの不満。情報はSNSで中国全土に伝わり、衝撃が広がった。中国各地で無差別殺傷事件が頻発しており、同様の事件が連鎖発生すれば、政府は無策と見なされ、中央政府批判に矛先が変わる可能性があり、火消しに必死だ。

同事件の後、珠海市当局は公安局長を兼務していた謝仁思副市長を解任。理由は明示されていないが、事件を受けての更迭が濃厚だ。習主席は負傷者治療を最優先することや極端な事件発生を防止する重要指示を出し、マカオ訪問前に事件の沈静化を終えたい思惑が透ける。

岑浩輝氏は「マカオに対する中央政府の支援と心遣いの表れで、大きな意義がある。新しい政府はマカオ社会各界を団結させ、奮闘し、革新し続ける」と強調している。

香港と同じ一国二制度を施行するマカオでなぜ「愛国」が進み、反中デモが起きないのか。香港大学民意研究計画が99年に実施した世論調査結果によると、マカオ市民のポルトガル統治への満足度は20%、香港市民の英国統治への満足度は65%で旧宗主国への期待度、不満度が歴然の差だ。

マカオは1554年にポルトガル領となり、440年近くポルトガルが統治したが、1966年に中国系住民による大規模な暴動で中国系住民側に死者が出たことで中国系住民が猛反発。香港で2003年、12年、14年、16年、19年に発生した反中デモ拡大でもマカオでは大きな反中デモは起こらず、マカオ立法会(議会)も民主派は極めて少ない議席数だった。1999年12月20日、中国人民解放軍がマカオ入りすると、約3万人が五星紅旗を振って歓待し、香港との違いが浮き彫りになった。

マカオの年間カジノ売り上げは世界最大規模を誇り、ギャンブルを含む観光産業に依存する体質は変わらない。返還前からの暴力団がらみのカジノ利権問題は返還後、ある程度は決着がついたが、カジノによる党幹部のマネーロンダリング(資金洗浄)一掃も課題だ。

台湾在住のマカオ問題研究家、譚志強氏は「かつてマカオは東洋のモンテカルロ、東洋のラスベガスと言われたが、最近は北京のイエスマン、一国二制度の模範生と揶揄(やゆ)されている。マカオ市民は幻想を抱かず、決められた農地を真面目に守る気質は混乱を恐れ、周囲に悪ガキ(香港)がいると、急に良い子になってしまう」と分析している。

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