Home国際中国不条理な格差、多発する無差別殺傷 習政権に矛先 中国

不条理な格差、多発する無差別殺傷 習政権に矛先 中国

11日、中国広東省珠海市の体育館前で車が暴走して 死傷者が発生した現場=中国のSNS画像より

中国では景気低迷、生活困窮、言論統制が続くことで社会矛盾へ激しい憤りから「社会報復(中国語で報復社会)」と呼ばれる無差別殺傷事件が各地で多発している。コロナ禍以降、賃金や生活が既存の努力では報われず、統制強化で生活レベルを引き下げざるを得ない不公平感への怒りのマグマが無差別殺傷への暴走に駆り立て情緒感染し始め、習近平政権にも批判の矛先が向けられかねない。(南海十三郎)

中国ではここ7カ月、都市部だけでなく内陸部で日本人や米国人など外国人、女性や小学生など児童などが死傷する無差別殺傷事件が発生し、国内外を驚愕(きょうがく)させている(図参照)。とくに6月、日本人母子が切りつけられ、日本人を護身しようとした中国人女性が刺されて死亡した事件や、9月、日本人学校に通う男児が中国人男性に切りつけられて死亡した事件は中国内に在留する日本人家族にとっては日本人ターゲットの死傷事件として衝撃が大きく、中国内での在留邦人の安全神話は完全に崩れ去った。

当初、刃物を使って死傷させる単独犯のケースが多かったが、一度に不特定多数をひき殺す車での犯行が増え、多数の人が集まる場所で車を凶器にするケースが増えている。

マカオに隣接する中国広東省珠海市。11日夜、62歳の中国人男性容疑者が車で体育施設のランニングコースに侵入して次々と人をはねた。35人が死亡し、43人が負傷という史上最悪の車での死傷事件。殺意は離婚協議への財産分与トラブルの不満。情報はSNSで中国全土に伝わり、血の海と化した悲惨な現場動画に衝撃が広がった。

翌12日は珠海市で中国国際航空宇宙博覧会(珠海航空ショー)が開幕し、新型ステルス戦闘機「殲35」など最新兵器を初めて一般公開し中国の軍事力を世界に誇示する場だったが、殺傷事件の惨劇が内外の注目を集めた。

習近平国家主席は同事件に迅速に対応するよう異例の指示を出し、「中央工作組(対策チーム)」を珠海に派遣。「中央政府は絶対善」「地方は腐敗の温床」という善悪構造で民衆の不安をかき消そうとするが、同様の事件が連鎖発生すれば、政府は無策と見なされ、中央政府批判に矛先が変わる可能性が高くなる。

中国外務省の林剣副報道局長は13日、「中国は犯罪率が最も低く、世界で最も安全な国の一つ」と記者会見で繰り返し、無差別殺傷事件での犠牲者や遺族に寄り添うどころか、どう対処するかすら口をつぐむ。

4月3日、江蘇省蘇州市では日本人男性が切りつけられ、6月10日、吉林省吉林市の公園で米国人の大学教員ら4人が刃物で刺されている。9月30日には上海市のスーパーで男性が来店客を切りつけ、18人が死傷。11月19日、湖南省常徳市の小学校前で車が小学生らを無差別にはねる事件が発生している。いずれも政府は事件の背景や動機を一切発表しないスタンスだ。

このような事件が頻発する中国社会の背景としては、経済低迷による将来への不満と不公平感、共産党一党独裁による情報統制、政府への不信が大きい。低所得者層は、どんなに働いても仕事の質が悪化し、生活物価が高騰、給与が下がる社会的不公平感が増幅。大学を卒業しても就職率が低く、若年層の自殺者が増えている。とくに不動産関連企業が低迷し、富裕層も不動産価格が目減りする不満が根強い。そのマグマが情緒感染して反日に動けば在留邦人の安全が脅かされかねない緊張状態が続く。

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