日本もジェノサイド認定を 中国のウイグル弾圧を非難-国際宗教自由サミット

パネルディスカッションで発言するイリハム・マハムティ氏 (右から2人目)=7月22日、東京都千代田区(加藤玲和撮 影)
「ウイグルの人々は動物以下の扱いを受けている」。在日ウイグル人による団体「日本ウイグル協会」のイリハム・マハムティ氏は、7月22日に都内で開かれた「国際宗教自由(IRF)サミット・アジア」でこう発言した。宗教的迫害に苦しむ人々や地域がアジアに多いことを懸念して、東京で行われた同サミットにおける最主要議題が、中国当局によるウイグルやチベットをはじめとする少数民族への同化政策だった。(辻本奈緒子)

中国が新疆ウイグル自治区のウイグル人などに対しジェノサイド(民族大量虐殺)を行っていると米国国務省が認定したのは、トランプ政権下の2021年。それ以来、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)がウイグル自治区でウイグル人など100万人以上の少数民族を強制収容していることを指摘するなど、この問題に対する国際的認知度は高まった。

サミットでは、中国当局による少数民族・宗教弾圧に話題が集中した。

「農民社会であるウイグルで男性たちが強制収容所に入れられることで、社会、経済、コミュニティーの崩壊が起きている。ウイグル人は貧しくなり、共産党の言うことを聞くしかない」。イリハム氏は世界各国から集まった参加者を前に窮状を訴えた。同氏は、強制収容所の存在などが指摘されるようになった17年以降、母親と連絡が取れていないという。

イスラム教徒であるウイグル人は、中国政府を率いる漢族とは異なる文化や価値観を持つ。09年に起こったウルムチ暴動を契機として、中国当局はテロ対策を口実にウイグル人やイスラム教への締め付けを公然と行うようになった。中国が「あらゆる方法でウイグル文化を中華文化の一部分にし、ウイグルの文化、歴史を完全に否定し、破壊しようとしている」とイリハム氏は指摘した。

熱心な仏教徒が多いチベット自治区も危機に瀕している。ダライ・ラマ法王日本代表部事務所のアリヤ・ツェワン・ギャルポ代表は「チベットもジェノサイドに苦しんでいる」と強調。チベットの人々にとっての信仰のよりどころである寺院や仏像が破壊されるなどの宗教的抑圧は「70年余り続いている」と述べた。同氏によると、チベットでは市民が軍や警察から監視されており、宗教施設は中国政府の許可なしに礼拝できないという。

サミットにはマイク・ポンペオ前米国務長官も登壇。ウイグル弾圧について言及した。同氏が現職時にジェノサイド認定して以後、現状は「さらに悪くなっている」との認識を示した。その上で、「米国にとって重要なパートナーである日本でも信教の自由が守られることが重要だ」と求めた。

米国に続いて欧州でも議会でウイグル弾圧をジェノサイド認定する動きが広まったが、日本政府は同様の認定をしていない。「人権外交を超党派で考える議員連盟」などが求めてきた「日本版マグニツキー法」(人権侵害制裁法)の制定も実現には至っていないのが現状だ。

米シンクタンク、アトランティック・カウンシル(大西洋評議会)のネイサン・セールズ非常勤上級研究員は、近隣諸国の情勢が不安定な分、「日本のリーダーシップが重要であり、それが日本のためにもなる」と強調した。

サミットの共同議長でトランプ前米政権で国際宗教自由大使を務めたサム・ブラウンバック氏は「アジアでは日本や韓国といった民主主義国家が積極的に関与すべきだ」と求め、「政治のリーダーは宗教を信仰する自由・権利を守らなければならない」と主張した。また、「世界の8割の人々は何らかの信仰を持っている」とした上で、「国境を超えている宗教が信仰の自由という旗印の下に団結すれば、『文明の衝突』を回避し、大きな影響力を発揮できるだろう」と期待を示した。

ウルムチ暴動 2009年7月5日、新疆ウイグル自治区ウルムチ市内で発生した大規模な暴動。広東省の工場でウイグル族の工員が漢族に襲われて死亡した事件への抗議デモがきっかけとなり、一部が暴徒化して漢族や治安部隊と衝突。当局発表で197人が死亡、1700人以上が負傷した。
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