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白紙デモ、同時多発で連携 中国

「ゼロコロナ」で抑圧、党へ不満増幅 背後に全米民主主義基金

11月27日、北京市の名門・清華大で、抗議の意思を示す白紙を掲げる学生(目撃者提供・時事)

中国では11月下旬から習近平政権の進める「ゼロコロナ」政策に白紙を掲げて抗議するデモが広がり、当局はコロナ規制緩和に舵(かじ)を切った。政府の厳しい統制で経済活動が停滞し、就職難に苦しむ若者や一般市民の生活不安が海外の民主化組織と連携して白紙運動を助長。規制緩和で歯止めをかけた形だが、抗議封じ込めが図れるか、習政権の中国式統治の矛盾はコロナ感染再拡大次第で不満の沸点を迎えそうだ。(南海十三郎)

11月26日~28日、南京、上海、武漢、長沙、大理など中国各地でほぼ同時に反ゼロコロナの白紙抗議デモが展開された。

白紙デモのきっかけは同24日、新疆ウイグル自治区のウルムチで子供を含む10人が死亡した火災事故。現場周辺はロックダウン(都市封鎖)されていたとの一部報道は誤りで、実際は火災の4日前から団地内は外出可能となっていた。

火災のあったウルムチ市天山区の吉祥苑団地は道幅が細く、日本で言えば「建築法違反」状態で消防車が入るのが困難な場所。火事が起きても消防車が入るのが困難で、都市封鎖とはまったく違う要因で救助活動に支障を来す場所だった。

26日夜、江蘇省南京市の南京伝媒学院キャンパスで新疆ウイグル自治区の出身の男子学生が「ウルムチの火災で亡くなった人のために」と声を上げ、集まった学生たちが歓声を上げて追悼。何も書かれていない白紙を掲げ、自由な言論がない中国共産党の厳しい統制に口を閉じるしかない社会への無言の抵抗を意味する白紙運動として展開され始めた。27日にかけて上海、広州、武漢、成都に波及し、少なくとも15都市前後に広がった。

習近平総書記の母校、北京の清華大学のキャンパスでも学生たちが集まり、北京市朝陽区では「PCR検査より民主的法治を」「独裁は不要」「辞任しろ」などの声も上がり、ヒートアップ。

遠藤誉筑波大学名誉教授の調査によると、「全国封鎖解除戦時総指揮センター」という「白い紙を掲げること」を活動要求する自律組織が「コロナによる封鎖のせいで消防活動ができなかった」との偽情報を流したと指摘する。

同組織は香港の雨傘運動を米国で支援したニューヨーク大学の学生組織や香港民主の父と呼ばれる李柱銘(マーチン・リー)氏を支援するNED(全米民主主義基金)、台湾民主基金会などが関わっていて、決して自発的なデモではない。

白紙デモは2014年に発生した香港の雨傘運動で欧米の民主化支援グループの協力があった支援形態と同じ動きで計画的に行われた。台湾統一地方選挙が11月26日に行われ、与党・民進党が大敗したが、すでに選挙の事前世論調査で民進党の苦戦は表面化していて、白紙運動はそれと重なる時期に連動決行されているとの見方が強まっている。

香港誌「亜洲週刊」の統計によると、海外の民主化活動拠点は中国国内以外に中国大使館や中国人留学生の多い66都市にあり、そのうち36が独立したネット発信で天安門事件を進めた学生、香港の雨傘運動に続く中国民主化運動を地下化しながら基盤を構築し、資金ネットワークも広げている。

11月27日、広東省広州市で白紙デモを行った数十人が12月に入って公安当局に拘束され、いまだに3人が保釈されていない。南京の女子大生を含む一部の抗議者は拘束され続けている。香港紙「明報」(14日付)によると、とくに「海外勢力との協力関係があるか」「活動資金の流れ」を徹底的に詰問されており、所持している携帯電話やパソコンの履歴から洗い出し、他の都市でも拘束されて保釈されていない抗議者は起訴、投獄の可能性が高いという。

中国政府は7日、新型コロナウイルス対策の行動・移動制限を大幅に緩和。公共の場でPCR検査の陰性証明を求められることはほぼなくなり、感染者が出た地域全体を封鎖することも禁じられた。

「今後1カ月は感染のピークを迎える」(復旦大学付属中山医院重症医学科の鍾鳴主任)との予測もある。当局は緩和が反政府デモにつながらないか警戒しており、監視による封じ込めが強まることになる。

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