生きた囚人から臓器摘出 中国・新疆の強制収容所 イスラム教徒標的

毎年最大5万人の推計も 移植産業 国家が主導

中国・新疆ウイグル自治区テケス県の強制収容所で2018年に行われた制圧訓練で、手錠、足かせ、覆面をつけられて連れ出される収容者(「新疆公安ファイル」より)

【ワシントン山崎洋介】中国で生きた囚人から移植のために臓器が摘出されていることを示す新たな証拠を研究者が有力学会誌に掲載し、衝撃を与えている。新疆ウイグル自治区の強制収容所で毎年最大5万人のイスラム教徒から臓器が強制的に摘出されているとの推計もあり、この問題への対応を求める声が高まっている。

外科医が関与

「囚人は手術開始時には生きていたが、心臓摘出の過程で外科医によって殺されたようだ」。米非営利団体「共産主義犠牲者追悼財団」のマシュー・ロバートソン研究員は先月、米議会のオンライン公聴会で、中国の外科医たちが強制的な臓器移植に関与しているというショッキングな事実を証言した。

ロバートソン氏とテルアビブ大学教授でシェバ医療センター心臓移植部門の責任者ジェイコブ・ラヴィー氏は、学会誌「米移植ジャーナル」に論文を掲載。学術データベース内の中国語の医学論文約12万本から抽出した2838本の臨床記録を調査したところ、臓器摘出に先立って外科医が不適切に脳死を宣言していたことを示す記述が71件あった。

ロバートソン氏は「こうした臓器の多くは、政治犯からのものである可能性が高い。このことは、西側諸国で教育を受けた多くの中国の外科医が超法規的な殺人に関与していることを意味する」と非難した。

姿消す28歳前後

こうした強制的な移植には主に気功集団「法輪功」学習者の臓器が用いられていると非難されてきたが、近年ではウイグル人らイスラム教徒が標的にされている可能性が指摘される。同財団のイーサン・ガットマン上級研究員は、20人を超える強制収容所の元収容者から聞き取りを行った結果、中国当局が臓器移植に最適とされる28歳前後の収容者に対して身体検査を行っていると、米議会の公聴会で証言した。

こうした収容者の一部は血液検査などを受けた後、ピンクやオレンジのブレスレットまたはベストを身に着けさせられた。それから約1週間後の深夜に突如、姿を消しているという。

ガットマン氏は「約20の収容所からの目撃証言は驚くほど一貫している。収容者のうち年間2・5%から5%が失踪しており、それは28歳前後の人たちだ」と強調。同氏の推計では、年間2万5千~5万人が強制的に臓器を摘出されているという。

学会から排除を

中国で国家が主導する臓器移植産業の市場規模は、年間約10億㌦と推定される。ロバートソン氏によると、2000年以降、中国で移植産業が飛躍的に成長したが、臓器を入手するための待ち時間は、わずか「数日から数週間」と宣伝されていた。これは、「血液型別にドナーが用意されており、必要に応じて処刑し、臓器摘出ができるようになったことを示している」という。

中国当局による強制的な臓器摘出の証拠が積み上がる中、中国との協力関係の見直しを求める声が高まっている。国際人権法律事務所グローバル・ライツ・コンプライアンスは4月下旬の報告書で、「強制的な臓器摘出に関与している中国の医療機関と協力関係にある医療専門家や機関は、人道に対する罪など国際犯罪の共犯者として告発されるリスクがある」と警告。ガットマン氏も、西側諸国の医学雑誌や大学、学会から中国の移植外科医を排除し、中国での外科用機器の販売や医薬品開発・試験を一切停止することを求めた。

昨年、強制的な臓器の売買に関与した個人に制裁を科す法案を提出している米共和党のクリス・スミス下院議員は公聴会で、「この野蛮な行為を止めるために、中国だけでなく世界中の協力者たちも直ちに対応すべきだ」と訴えた。