香港、来月中国返還25周年

デモ封殺、コロナには苦慮 習主席の式典出席で厳戒態勢

反テロ行為の疑いがある動きに市民の通報を促す香港警察当局のPR画像

7月1日、香港は英国から中国に返還されて25周年の節目を迎える。2019年の大規模な民主化デモを国家安全維持法(国安法)の制定で押さえ込み、反政府活動を封じ、反テロ対策をさらに強化している。コロナ対策では感染者数が押さえ込めていない。50年間、高度な自治を保障するはずの「一国二制度」は折り返し点を迎える。(深川耕治)

1日の返還25周年記念式典では習近平国家主席が出席するため、コロナ対策、テロ対策の双方から厳戒態勢が敷かれ、前回、17年の返還20周年の香港滞在時より厳しさが増す。

中国本土はゼロコロナ政策で厳しい対応を取り、習主席が6月8日、四川省入りして視察した際は新規感染者数は1日平均3人程度。一方、香港の新規感染者は先月下旬、200~300人前後だったのが今月に入り、500人前後、中旬には700人前後まで増えており、国賓の滞在日程に影響を及ぼしかねない。10日付の香港紙「明報」によると、香港の政府高官、警察幹部、現場周辺の警備員ら約1000人を23日ごろからホテルで7日間隔離する準備が進められている。

テロ対策やデモ対策はさらに厳しい。香港警察は市民が反テロ行為を計画、準備している動きを未然に察知して当局に通報した場合、報奨金を提供する「反テロ通報ホットライン」を8日から開設し、市民からの情報提供を呼び掛けている。

ホットラインでは、SNSを通して常時、情報提供を受け入れる態勢だが、市民の意向を尊重し、個人情報の提供を強制せず、特にテロやデモに発展する可能性がある国家安全維持法(国安法)違反となる動きに関与する重大な動きの場合、報奨金を出すが、市民が偽情報で報奨金目当ての情報を乱発するような動きがないよう注意喚起している。

警察トップ出身の李家超次期行政長官は統制強化によって「大規模デモを二度と起こさない自信がある」と語っており、旧ソ連時代の密告社会、中国の意向に沿う「警察都市」化する懸念も憂慮される。

警察当局は「『光復香港 時代革命』のような標語、横断幕、刊行物がある場合、通報を歓迎する。中国本土の急進的な反中反共分子が地下化し、未然にテロ防止に役立つことを期待している」(反テロ対策専門チームの梁偉基警視)と話しており、情報提供した市民には4000香港ドル(約6万8000円)、傷害や殺人に関わる情報の場合は40万香港ドル(約680万円)~80万香港ドル(約1360万円)の報奨金もあり得るとしている。

親中派で新民党所属の黎棟国立法会議員(元香港保安局長)は「国安法が施行されて以来、香港社会の秩序は平静を回復したが、不測の暴力襲撃事件が発生することを未然に防ぐために新たなホットラインを設立する必要がある」と話している。

李家超氏が在任中に優先的に取り組むとみられるのが、返還以来、中国と香港の両政府の懸案となっている国家安全条例の制定だ。香港基本法23条で制定が義務付けられながらも、立法会(議会)で民主派の根強い反対が続き、阻止されてきた。

しかし、昨年12月の立法会選(90議席)で親中派が89議席を獲得し、「翼賛議会」化。デモを徹底的に封殺する国安法の制定に次いで国家安全条例の制定が現実味を帯びてきた。同条例は「国家機密を盗み取る行為」や「外国の政治組織・団体の政治活動」を禁じる厳しい内容で、制定されれば、住民だけでなく、各国の外交官らへの統制も強まりそうだ。

7月2日には、西九竜地区に建設された香港故宮文化博物館が一般公開される予定で、習主席の訪問も検討されている。同地区には香港文学館の設立も検討が具体化。アジアの金融センターとしての魅力が失われる中、ソフトパワーで巻き返そうとする中国政府の文化戦略が、低迷する観光産業も含め、欧米の厳しい批判を浴びながらも盛り返すか、見極める必要がある。