中国、太陽光パネルを迂回輸出か

関税回避の疑い、米政権が調査 新疆の強制労働に懸念も

中国の太陽光パネル製造業による迂回輸出の疑いについて調査を行っている米商務省のレモンド長官(UPI)

バイデン米政権は、中国の太陽光パネル製造業者が東南アジア4カ国を経由して輸出することで米国の関税を不当に迂回(うかい)しているかどうかを調査している。太陽光発電の推進に遅れをもたらすとして業界団体などは反発する一方で、不公正な貿易の是正や中国政府によるウイグル人らへの強制労働の懸念などから調査を支持する声も強く、政権の今後の対応が注目される。(ワシントン・山崎洋介)

今回の調査は、中国の企業がマレーシア、ベトナム、カンボジア、タイを経由して輸出することで、関税を不当に回避しようとしているとして、カリフォルニア州シリコンバレーの小規模太陽光パネル業者「オーキシン・ソーラー」が調査を求める請願書を商務省に提出したことを受けて3月に始まった。

中国企業が回避しているとオーキシン社が指摘する関税は、オバマ政権時代の2012年に中国企業が政府から巨額の補助金を受け生産した太陽光パネルが米国市場に市場価格以下で輸入されるのを防ぐために課された。こうした政策の結果、21年に中国から直接輸入された太陽光パネルは、全体の1%に満たない。その一方、東南アジア4カ国は米国の太陽光パネル輸入の約8割を占めている。

今後、予備的調査結果が8月までに、最終結果は来年1月までに発表される予定となっている。だが、バイデン政権がこれらの国からの輸入品に大幅な関税を課せば、米国の太陽光産業に大きな影響を与えることが予想される。

業界団体は、商務省が調査を開始することによりすでに打撃を被っていると訴えている。太陽エネルギー産業協会(SEIA)は、調査の影響で318の太陽光プロジェクトが中止または延期されたと主張。調査の結果次第では、太陽光パネルの輸入に対して関税が過去にさかのぼって課される可能性があることから、海外メーカーはこれを懸念し、東南アジアから米国へのパネル出荷を停止したことが要因だとされる。

バイデン政権が気候変動対策を看板政策として掲げる中、一部高官は、調査について不満を募らせていると伝えられる。ワシントン・ポスト紙によると、気候変動問題を担当するケリー大統領特使やグランホルム・エネルギー長官が、調査について政権内で懸念を示しているという。

また連邦議会では、超党派の21人の上院議員が5月1日、バイデン大統領に商務省の調査を「迅速な結論」に導くよう促す書簡を送付。書簡は「重大な政策的影響を慎重に検討すべきだ」とし、太陽光産業への影響を考慮するよう求めた。

一方、オーキシン社による申し立ては、中国の不公正な取り組みから米国の産業を保護すべきだとの立場から、党派を超えた一定数の議員から支持を得ている。

共にオハイオ州選出であるロブ・ポートマン(共和党)、シェロッド・ブラウン(民主党)両上院議員は3月、レモンド商務長官に書簡を送り、東南アジアで事業を行う中国の太陽光企業が「中国の原材料、労働力、設備投資、研究開発を利用している」と指摘し、これらは「教科書通りの不正な迂回行為だ」と主張。疑惑が解消されなければ、「国内産業全体と数多くの米国の製造業の雇用が危険にさらされる」と訴えた。下院の15人の超党派議員も、太陽光サプライチェーンにおける強制労働の問題などを指摘し、商務省に徹底した調査を求めた。

中国におけるウイグル人らへの強制労働の疑いをめぐっては、英ノッティンガム大学が3月に発表した報告書で、「ある推定では、世界の太陽光発電パネルの約97%に、強制労働によって作られた新疆ウイグル自治区の部品が含まれている可能性がある」と指摘するなど、懸念が広がっている。

米ナショナル・レビュー誌は、商務省の調査開始により太陽光プロジェクトが相次いで中止や遅延に追い込まれていることは、「米国の太陽光パネル産業が少なくとも今のところ中国のポリシリコンに依存しており、そのかなりの割合が新疆自治区からのもので、ウイグル人の労働力を利用していることを証明している」と指摘した。