南モンゴル 強まる中国同化政策 家族通じ日本在住者に圧力

「あなたのせいでバラバラに」

国会周辺で中国への抗議活動を行うオランチメグさん(右から3人目)=3月8日、東京・永田町

南モンゴル(中国の内モンゴル自治区)は満州国の一部であった時代があり、日本と縁の深い地域だ。その南モンゴルで、中国当局が同化政策の一環として、モンゴル語への弾圧を続けている。こうした動きに反発し、言語や文化を守ろうと立ち上がったモンゴル族への圧力は、日本在住者やその家族にまで及んでいる。(村松澄恵)

南モンゴルの現状を国際社会に訴える活動を行っているヒヤン・オランチメグさんは来日して20年以上になる。昨年初め、機密文書だと知らずに「内モンゴルの一部地域で使用されていた現地の歴史の教科書がなくなる」という内容の文書をSNSに投稿した。

現地では教育現場にとどまらず、街中からモンゴル語表記の看板などが撤去され、モンゴル族の生活環境から母語が失われつつある。既に多くの漢民族が移り住み、人口の8割以上を占めている。若者世代では、モンゴル語を話せない人も出てきた。

オランチメグさん

南モンゴルにおける中国の圧政に抗議し、自決権確立を目指す国際組織「南モンゴルクリルタイ」のオルホノド・ダイチン幹事長は「自分たちの母国を失ったというのが現状。残った言語すらも消されそうになっている」と訴えている。

オランチメグさんが投稿したのは、こうした現状に危機感を持ったからだ。しかし、その日の夜に、現地に住む姉から「中国当局関係者が家に来た」と連絡があった。自分の行動のせいで姉夫婦が職を失うと警告され、親族に迷惑を掛けたくない気持ちと、当局への恐怖で「二度と政治的な運動には関わらない」と誓った。姉からは投稿を削除し、その証拠としてスクリーンショットの提出まで求められた。

「警察や安全局のやり方は(投稿した本人に)直接連絡せず、家族や親友など大切な人を通じて感情に訴えるのが特徴。家族の結束が強いモンゴル人にはそれが効果的だ」とオランチメグさん。当初は恐怖で何も考えられなかったが、時間がたつにつれ、人の弱みを利用するやり方に怒りが湧いたという。

このままでは民族が消えてしまうという思いから、昨年4月、当局の圧力を受けても本格的に活動に関わることを決意した。

同時期に、日本では自民党の高市早苗・衆院議員(現・政調会長)を会長に自民党の有志議員が「南モンゴルを支援する議員連盟」を発足。衆院は今年2月、南モンゴルや新疆ウイグル自治区などで、人権侵害に懸念を表明する決議を採択した。

昨年7月、中国共産党創立100年に当たって都内で行われた抗議デモの際にも姉からメッセージが届いた。「7月1日は敏感な日だから、それだけは絶対に参加しないで」と懇願された。「夫に迷惑が掛かるから離婚しないといけない。あなたのせいで家族がバラバラ」とも。その後も抗議活動を行うたびに、家族や親戚の家に警察が訪れたという。

家族や親友からは「ローンが借りられなくなった」「故郷に帰れなくなるよ」など、泣き落としや説得の電話が昼夜問わずかかってくる。ただ、話し方が時折不自然で「誰かに言わされている」のだと直感した。最終的には、姉を含む家族や親しかった人たちとの連絡を断った。

「モンゴルのために活動するのは、あなたじゃなくてもいいのでは」と言われることもあった。しかし、オランチメグさんは「活動を続けなければ、本当に助けが必要な時に誰も助けてくれない。教授でも知識人でもない私のような人も、声を上げられる。全員が参加しなくても、心では応援してほしい」と呼び掛けている。