沖縄県で現在、新型コロナウイルス感染が爆発的に増えている。中国に詳しいノンフィクション作家の河添恵子氏はこのほど、沖縄で講演し、コロナ禍と中国の覇権主義強化とは無関係でないと指摘。また、沖縄にも中国の工作が進んでおり、台湾有事にも現実味が増しているとしながら、「日本は黙ったままではやがて中国共産党の檻(おり)の中に入ってしまう」と警告した。(沖縄支局・豊田 剛)
コロナ禍は「中国共産党が仕掛けた大恐慌」
沖縄県の新型コロナウイルス感染が爆発的に増えている。県内の直近1週間(9日現在)の人口10万人当たり新規感染者数は349人で、約2年前に国内で感染事例が出て以来、最多を更新。沖縄県は9日からまん延防止等重点措置が適用され、飲食店の時短営業が要請され、数多くのイベントが中止になるなど、県民生活に影響が出ている。
こんな渦中の8日、浦添市で講演した河添氏は、コロナ感染をあまりに恐れるあまり、「ソーシャルディスタンスや、テレワーク、ステイホームを奨励され、人々は孤立し、精神的にも経済的に追い込まれる」と指摘。こうした状況は「中国共産党が仕掛けた大恐慌」だと警鐘を鳴らした。
米下院外交委員会の「新型コロナの起源」報告は昨年8月、武漢ウイルス研究所からの流出と結論付けたが、河添氏はその1年前、自身の著書「習近平が隠蔽したコロナの正体それは生物兵器だった!?」で武漢発の生物兵器としてのウイルス流出を指摘している。
講演の中で河添氏は、中国との関係が深い仏バイオ企業の創設者アラン・メリュー氏らが米ワクチンメーカーとつながり、「ワクチン錬金システムを作っている」と述べ、フランスと中国の「闇のつながり」があることを指摘した。
また河添氏は、中国に対抗する勢力として、英語圏の諜報(ちょうほう)同盟「ファイブアイズ」(米、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)に加えて北欧とバルト3国の7カ国がカギとなっていると指摘。中でも、中国共産党による覇権主義を嫌うリトアニアに昨年11月、大使館に該当する台湾代表事務所が設置された。河添氏は「反中の急先鋒である北欧バルト地域が中国離れのきっかけをつくっている」として評価した。
沖縄で在日米軍妨害工作、台湾有事は対岸の火事ではない
河添氏は、フランス軍事学校戦略研究所(IRSEM)が昨年9月に発表した報告書『中国の影響力作戦』にも言及した。これは、中国の覇権主義戦略をまとめたもので、沖縄と仏領ニューカレドニアで独立派運動をあおり、潜在的な敵の弱体化を狙っていると記している。
特に沖縄への関与は、中国にとって「日本や在日米軍を妨害する」ことを意味しており、①米軍反対運動への支援②中国と沖縄の経済関係強化③米軍施設に近い沖縄北部での中国人投資の増加④メディアを通じて米軍基地の存在を疑問視する報道を繰り返す――などの動きがあると指摘している。
こうした中国の工作活動について河添氏は、戦わずして勝つ「孫子の兵法」であることに変わりないと指摘した。
実際に中国の工作活動や覇権主義は一層露骨になっており、オースティン米国防長官は昨年12月4日、カリフォルニア州での講演後の質疑応答で、中国による相次ぐ台湾の防空識別圏(ADIZ)侵入は「台湾侵攻に向けた予行演習の可能性がある」と述べ、「台湾有事が発生すれば、沖縄と日本の安全に大きな影響が出る」と警告した。台湾有事になれば、台湾と国境を接する与那国島をはじめ沖縄へも飛び火する可能性があるというのだ。
日米防衛力強化に反対する玉城知事、中国に抗議せず
7日に開催された日米の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)は、「東シナ海及び南シナ海を含め、現状変更を試みるいかなる一方的な行動にも反対する」「日本側から、日本の領土をあらゆる手段で守る決意を表明した」とする共同文書を発表。特に同委員会では、台湾有事を見据え、「南西諸島での自衛隊の態勢を強化し、日米の施設の共同使用を増加させる」方針が示された。
ところが、玉城デニー知事はこれについて反対の意向を示し、「地域における緊張緩和と信頼の醸成に努めてほしい」と注文。尖閣諸島(石垣市)に領海領空侵犯を繰り返す中国に対しても、「話し合いによる解決」を提案するにとどまり、抗議の声を上げていない。
河添氏は講演の締めくくりで、中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区のウイグル民族に対するジェノサイド(大量虐殺)を例に挙げ、「日本は黙ったままではやがて中国共産党の檻の中に入ってしまう」と警告した。