【サンパウロ綾村悟】南米の大国ブラジルで4日、大統領選の第1回投票が行われる。大統領選には12人が立候補する。世論調査では、世論調査では左派の現職ルラ大統領(80)と、ボルソナロ前大統領の長男の右派フラビオ・ボルソナロ上院議員が他候補を引き離し、実質的に両氏の対決となっている。

南米では近年、アルゼンチンやコロンビア、ペルー、チリなど主要国で保守政権が相次いで発足し、ブラジル大統領選の行方は地域の政治勢力図に大きく影響する。米国が進める「西半球の安全保障」と対中牽制(けんせい)の動きの中でも、ブラジルは大きな位置を占める。
ダッタフォーリャ社が1日に発表した最新の世論調査では、第1回投票でルラ氏45%、フラビオ氏40%、決選投票でも48%対45%の接戦となっている。過半数を獲得する候補がいなかった場合、25日に決選投票が行われる。同日に上下両院選、州知事選も実施される。
最大の争点の一つが治安だ。国民の多くが治安悪化に不安を抱えており、「首都第一コマンド(PCC)」「コマンド・ベルメーリョ(CV)」という2大犯罪組織の影響力も大きい。フラビオ氏は警察力の強化や厳罰化を掲げ、ルラ氏は連邦政府と州の連携や国際協力を重視する。米国が両組織を外国テロ組織に指定したこともあり、犯罪対策は対米関係とも結び付く問題となっている。
経済も重要な争点だ。ルラ政権は低失業率や格差の改善を実績として訴えるが、物価高や家計の債務負担、高金利への不満は大きい。ルラ氏は社会政策を維持しながら財政の均衡を図る方針だ。
フラビオ氏は、歳出削減や省庁再編によるスリム化、減税、債務抑制を掲げる。高金利が企業や家計の負担となる中、財政再建と社会政策をどう両立させるかが課題だ。
司法改革も欠かせない争点だ。ブラジルの最高裁(STF)では、判事1人が単独で暫定判断を出すことができる。個々の判事に大きな権限が集中する仕組みは、ブラジル政治で長く論争の的となってきた。右派は、この仕組みが近年、保守派に不利な判断を多くもたらしてきたと批判。フラビオ氏は単独判断を制限する改革を掲げている。
対中関係も次期政権の課題だ。中国はブラジル最大の貿易相手国で、今年上半期の輸出額でも首位を占める。フラビオ氏が政権を握っても経済関係そのものが直ちに変化するわけではないが、中国による巨額のインフラ投資の見直しや、米国など西側諸国によるレアアース(希土類)投資の拡大が進む可能性がある。安全保障面でも、フラビオ氏はトランプ米政権主導の「米州の盾」への参加を表明しており、対米安全保障協力の拡大が予想される。
一方、ルラ氏が当選すれば、中国との政治・経済関係は強まり、新興国グループ「BRICS」などを通じたグローバルサウス(新興・途上国)との連携を重視する現政権の外交路線が続くとみられる。
治安や経済、司法改革に加え、米国との安全保障協力と中国との経済関係をどう調整するか。今回の選挙は、ブラジル一国の政権選択にとどまらない。







