【サンパウロ綾村悟】大統領選を間近に控えたブラジルのルラ大統領が、オンラインカジノやスポーツ賭博サイトなど、オンライン賭博への規制強化に動いている。ルラ氏は14日、賭博依存の被害者との面会を振り返り、オンライン賭博を「病気」と表現。「非常に多くの苦しみと依存がある」と述べ、近く新たな対策を発表すると表明した。

オンライン賭博市場を本格的に合法化したのは、ほかならぬルラ政権だった。2023年12月、非合法下でスポーツ賭博サイトが急増する中、政府は市場を禁止するより、合法化して課税・監督する方が現実的と判断した。議会審議の過程でオンラインカジノも対象に加えられ、25年1月に合法市場がスタートした。
ところが、市場拡大とともに副作用が表面化した。スマートフォンで手軽に遊べる賭博への依存が広がり、家計への影響も深刻化。当局の分析では、25年に家庭が賭博で失った金額は625億レアル(約1兆9000億円)にも達した。
女性を対象にした世論調査でも、回答者の67%が「オンライン賭博が家庭を破壊している」と回答した。依存症の急増も報告されている。
また、ルラ政権が合法化からわずか1年余りで再規制に動く背景には、10月の大統領選がある。
賭博依存や家計への打撃は単なる経済問題ではない。家族の結束や道徳を重視するキリスト教福音派など宗教界にとっても重要な問題となっている。ルラ政権は9月、宗教団体と賭博規制について協議。協議後の16日には、与党・労働者党(PT)が福音派向けの選挙キャンペーンを開始した。
複数の最新世論調査で、ルラ氏と右派のフラビオ・ボルソナロ上院議員は接戦となっており、福音派を含む宗教票は両陣営にとって重要になっている。
政府は現在、オンラインゲームの禁止やスポーツ賭博への大幅な制限を盛り込んだ暫定措置令も検討している。合法化によって市場を取り込んだはずが、再び規制強化に転じる形だ。
一度開放した市場を、政府はどこまで再び規制できるのか。統合型リゾート(IR)を巡る議論が続く日本にとっても、ブラジルの事例は、市場開放に伴う依存症対策や家計への影響を制度設計の段階から考える必要性を示している。







