【サンパウロ綾村悟】ブラジル・バレーボール連盟(CBV)はこのほど、国内主要大会の女子カテゴリーへの参加資格を生物学的女性に限定し、全ての選手に遺伝子検査(SRY検査)による資格確認を義務化すると発表した。

CBVはこれまで、テストステロン(ホルモン)値の管理を条件とするトランスジェンダー女性による女子バレー大会への参加を認めてきた。しかし、国際オリンピック委員会(IOC)と国際バレーボール連盟(FIVB)が今年3月から遺伝子検査による資格確認を義務化したことで流れが変わった。
IOCは、「男性の性発達を経た身体は、筋力・パワー・持久力に依存する全ての競技で有利である」との近年の研究結果を受け入れ、女子カテゴリーの公平性と安全性を求めた。SRYは、胎児期に男性側への性分化をスタートさせるスイッチの役割を果たす遺伝子。この遺伝子の有無により生物学に基づいた資格確認を行う。
一方、CBVの発表は、ブラジル国内で大きな議論を巻き起こしている。その背景となっているのが、トランスジェンダーの女子バレー選手としてトップリーグに参加しているティファニー・アブレウ選手の存在だ。
同選手は、2017年からブラジル女子バレーのスーパーリーグ(1部)で得点王を獲得しリーグ優勝を重ねてきた。現在は強豪チームのオザスコに所属している。ブラジルのスポーツ界では、ほぼ唯一の知名度のあるトランス女性選手だ。今回のCBVの決定により、少なくとも全国大会への出場はできなくなる可能性が高い。
CBVの決定に対しては、ブラジルの女子バレー選手やメディアなどから賛否両論が相次いでいる。
元女子バレーブラジル代表で金メダリストのタンダラ選手は、「男性思春期を経験した身体が女子カテゴリーに入るのは公平ではない」 とCBV決定に賛成している。
また、保守誌の「OESTE」も、ユーチューブ番組などを通じて「行き過ぎたポリティカルコレクトネス(政治的な正しさ)の終わり」「女子スポーツを守るための必要な一歩」と決定を評価している。
一方、ティファニー選手は、「屈辱的な性別検査の復活」などと批判し、所属チームと共に法的闘争も辞さない構えを見せている。
LGBT・トランス当事者団体なども「トランスをスポーツから締め出す動き」「科学を装った排除だ」などと強く批判している。
グローボ系などの大手メディアからも、ティファニー選手の排除や対立先鋭化の動きを批判的・懐疑的に捉える論調も少なくない。
近年、保守政治家を中心にトランス選手による女性スポーツへの参加禁止を求める動きが多くなっている。19年以降に国会と地方議会で少なくとも57件のトランス女性選手を禁止・制限する法案提出が行われた。CBVの決定は、こうした保守派の動きを後押しすることにもなりそうだ。







