
ブラジル与党の左派・労働者党(PT)は2日、サンパウロで開いた党大会において、10月に実施されるブラジル大統領選挙に向けてルラ大統領(80)の再選出馬を正式決定した。副大統領候補は現職のアルキミン副大統領。(サンパウロ綾村悟)
南米では近年、右派勢力の台頭が相次いでいる。地域最大の経済大国ブラジルの大統領選は、この潮流をさらに加速させるのか、それとも押しとどめるのかを占う大きな試金石となる。
ルラ氏は演説で「80歳の若者がもう一度勝つ」と述べ、健康不安説を一蹴。「勝てば4期目となるが、それが最後だ」と述べ、その後は大統領職から退く意向を示した。
公約では、教育や高齢者政策に加え、国防産業の育成、レアアースなど重要鉱物資源の国益確保を重点課題に掲げ、「左派も国防を軽視すべきではない」と訴えた。左派政権が安全保障を前面に打ち出すのは異例とされ、米国との関係悪化や国際情勢の変化を意識した発言として注目を集めた。
選挙は、ルラ氏と最大野党・自由党(PL)のフラビオ・ボルソナロ上院議員との事実上の一騎打ちとなる公算が大きい。フラビオ氏は、ボルソナロ前大統領の長男だ。
最大の争点は、トランプ米政権による対ブラジル関税強化を契機とした対米・対中外交だ。ルラ政権は、中国によるブラジル産畜産物の輸入拡大を歓迎し、「米国が買わないなら別の市場を探す」と発言するなど、対中接近を鮮明にしている。
一方、フラビオ氏は7月7日に出席した米議会公聴会においてルラ政権の対中傾斜を批判し、自らを親米保守勢力の旗手として位置付けた。ルラ氏も「国家主権と民主主義を守る選挙」と強調しており、対米・対中路線を巡る選択も選挙の争点となる見通しだ。
世論調査ではルラ氏が優位だ。主な調査では、第1回投票と決選投票の両方でフラビオ氏を4~8ポイントリードしている。ただし、ルラ政権の支持率は41%と悪化しており、フラビオ氏が反ルラ票を集めることができれば接戦となる可能性もある。
ルラ陣営には不安材料もある。連邦警察は7月末、ルラ氏の長男を医療用大麻事業を巡る影響力行使疑惑で正式捜査の対象とした。
今回のブラジル大統領選は、治安・経済対策に加えて、対中接近を進める左派政権の継続か、親米保守路線への転換かを問う側面も強い。南米政治の潮流だけでなく、米中対立が深まる国際情勢にも少なからぬ影響を及ぼす選挙として、その行方が注目される。






