トップ国際中南米日本、1―2で惜敗 ブラジルを追い込んだ日本の現在地 サッカーW杯

日本、1―2で惜敗 ブラジルを追い込んだ日本の現在地 サッカーW杯

 米国ヒューストンで29日(日本時間30日)に行われたサッカー・ワールドカップ(W杯)決勝トーナメント1回戦、日本対ブラジル戦は、優勝候補ブラジルの劇的な逆転勝利で幕を閉じた。

前半、先制ゴールを決める佐野(手前)=29日、米ヒューストン(時事)
前半、先制ゴールを決める佐野(手前)=29日、米ヒューストン(時事)

 マルティネッリが後半追加時間に決勝点を奪った瞬間、ブラジルのテレビ実況は絶叫した。「ユニホームには重みがある。伝統には重みがある。歴史には重みがある」。5度の世界一を誇る王国が、その伝統と歴史の重みを示すように、最後の最後で日本を振り切った。

 一発勝負の舞台。もはや「日本がどこまでブラジルに抵抗できるか」ではない。「ブラジルが総力を挙げなければ、日本に敗れる」という現実だった。

 前半の日本は、ブラジルを恐れなかった。5―4―1の守備網で中央を閉じ、相手の攻撃を外へ追いやりながら、ボールを奪った瞬間にカウンターへ転じた。29分、佐野海舟(マインツ)がダニーロのパスミスを逃さず先制。ブラジルはボールを保持しても決定機を作れず、失点後はパスミスや味方同士の衝突まで起きた。ブラジルの大手ニュースサイトUOLは、前半の代表が「技術面、精神面で崩壊した」と表現した。

 だが後半、王国の選手層とアンチェロッティ監督の修正力が表れた。負傷したパケタに代えてエンドリッキを投入し、前線を4枚に近い形へ変え、細かな崩しから人数をかけたクロスと空中戦へ転換。カゼミーロの同点弾は、その狙い通りのヘディングだった。さらにマルティネッリを中央寄り、ビニシウスを外へ動かして圧力を強めたが、日本も鈴木彩艶の好守などで耐え、ブラジルは終了間際まで勝ち越せなかった。

 後半に押し込まれた時間は長く、両国の実力差は確かにあった。しかし、ブラジルの勝利も紙一重だった。交代カードと戦術変更を重ね、後半追加時間にようやく勝ち越した。ブラジル側の報道も「ドラマを生き延びた」と表現し、大苦戦の末の突破だったと伝えている。

 英紙ガーディアンは、日本が勝利を目前にして固くなったと見るのは「不公平」だと指摘。精神面で崩れたのではなく、アンチェロッティ監督が日本の攻略法を見いだしたと分析した。その上で、今回の内容を「日本がW杯で見せた史上最高の出来に違いない」と高く評価した。

 日本は敗れた。だが、少なくともこの日のブラジルに王国の余裕はなかった。そこにあったのは、敗退を恐れ、必死に勝利を取りに行く王国の顔だった。試合後、ピッチに座り込み、両手で顔を覆った佐野らの姿は、日本がもはや「善戦」では慰められない場所、本気のブラジルと勝敗を争える場所まで来たことを示す現在地だった。(サンパウロ綾村悟)

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