トップ国際中南米日系女性大統領誕生なるか ケイコ氏と左派候補が対決 ペルー大統領選 来月7日に決選投票

日系女性大統領誕生なるか ケイコ氏と左派候補が対決 ペルー大統領選 来月7日に決選投票

4月13日、ペルーの首都リマで記者会見するケイコ・フジモリ氏(EPA時事)

南米ペルーで6月7日、大統領選の決選投票が行われる。対決するのは、故フジモリ元大統領の長女で右派のケイコ・フジモリ氏(50)と、左派のロベルト・サンチェス元貿易・観光相だ。ケイコ氏は今回で4度目の挑戦で、過去3回はすべて決選投票の末に惜敗してきた。ケイコ氏が勝利すれば、ペルー初の女性大統領となり、世界初の日系女性大統領となる。今後の南米政治の潮流を変えるだけでなく、日系社会と日本にとっても象徴性の大きな選挙となるだろう。(サンパウロ綾村 悟)

4月12日の第1回投票では35人もの候補者が乱立し、ケイコ氏が17%で首位、2位にサンチェス氏が入った。過半数を得る候補が出なかった背景には、政党政治の弱体化と、長年続く政治腐敗への失望がある。議会と大統領の対立が常態化し、汚職疑惑による失脚や罷免が繰り返されてきた。直近の10年で9人が大統領を務めた。経済指標が決して悪いわけではないが、組織犯罪や移民の流入に伴う治安悪化や政治腐敗、経済格差が有権者の不信につながっている。

ケイコ氏は右派政党「フエルサ・ポプラル」の党首として、治安対策、不法移民対策、民間投資の拡大を掲げる。父親のアルベルト・フジモリ氏は、強権的との批判を受けた一方、治安と経済の立て直しを進めた評価は今も根強い。ケイコ氏は父への評価や自身を巡る賛否を背負ってきたが、保守層や都市部の有権者、経済界からの支持を集めている背景には、「強いペルー」を目指し実務と秩序を重んじる姿勢への期待がある。

サンチェス氏は汚職疑惑により2022年に解任されたカスティジョ前大統領の下で貿易・観光相を務めた。獄中のカスティジョ氏の支持を得ながら、既存政治への不満が渦巻く農村部や地方の反体制票を取り込み、選挙戦終盤で支持を広げた。公約には経済への国家介入強化や資源政策の見直しを盛り込み、サンチェス氏の決選投票入りが伝わると、株価や通貨が下落した。

直近の世論調査では、両候補の支持率は38%前後の同率で推移しており、中間層の取り込みが決選投票のカギとなりそうだ。

ペルーは、南米における米中対立の前線の一つだ。中国は港湾、資源、インフラ分野で存在感を強め、24年末には中国国営企業が出資する巨大港湾施設が開港し、中国の対南米貿易ハブとして位置付けられた。米国は安全保障と投資の両面で巻き返しを図っている。

ペルーは銅などの重要鉱物に加えてレアアース資源でも注目を集めており、資源輸出や太平洋岸の物流網の中核拠点である。その政権選択は、国内政治にとどまらず、中南米全体のバランスにも影響する。

サンチェス氏は、ペルーのBRICS加盟を推進すると表明しており、米国主導の秩序よりも中国などグローバルサウス(新興・途上国)重視の外交を志向する。

ケイコ氏は選挙中にも「米国に再び積極的に関与させる役割を果たす」と明言しており、不法移民の追放や市場開放、左派への対抗といった点でトランプ政権との親和性は高い。

南米では、2000年代初頭の左傾化から、ここ数年は治安や移民問題、経済の安定を重視する有権者の意向から保守化の波が続いている。今年はコロンビアやブラジルでも大統領選挙が控えており、ペルー大統領選の行方は経済・外交を含めて地域への波及が避けられない。

また、日本にとっても故フジモリ元大統領は、人権侵害問題などで賛否はあるが日本大使公邸人質事件を解決に導いた恩人でもあり、世界初の日系大統領だ。

ケイコ氏が当選した場合、南米の保守回帰を象徴するだけでなく、日系移民史が再び国際政治の表舞台に戻る出来事でもある。長い敗北の末に勝ち上がることになれば、その物語は日系社会にとって誇りとなり、日本の政治や外交も新たな注目を呼ぶだろう。

仮に日本初の女性首相でもある高市首相と大統領となったケイコ氏との会談が実現すれば、ペルーの日系人だけでなく、日本にとっても資源国ペルーとの関係強化につながる大きな節目となる。

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