【サンパウロ綾村悟】ブラジル中西部マットグロッソ・ド・スル州の州都カンポグランデで先月22日、公共及び民間の共同利用施設における女性トイレの使用に関してトランスジェンダー女性の利用を制限し、「生物学的女性」に限定する市条例が成立した。
性自認を優先するブラジル連邦最高裁判所の判例と真っ向から対立する内容で、10月の大統領選挙(総選挙)を前に保守・リベラル両派の議論が再燃。同様の動きは他の保守系自治体にも波及しつつある。
条例成立の背景には、市議会に強い影響力を持つ保守キリスト教福音派の存在があったが、条例に署名したアドリアーネ・ロペス市長や賛成派は「娘や自分たちの安全、プライバシーを守りたい」という一般市民の女性たちの声が議会に届いたものだと主張している。
一方、ロペス氏は議会が可決した当初案のうち、女子スポーツ競技へのトランスジェンダー女性の参加制限については、「拒否権」を行使して削除した。
これは、最高裁との全面衝突による条例全体の即時無効化を避けるための政治的判断とみられる。ロペス氏は「トイレという最もプライベートな空間の保護を優先し、確実に一歩を踏み出す」という実利を取った。
法案の議論を巡って、両派が激しい火花を散らしている。条例推進派の市議は、「これは差別ではなく、生物学的な現実に基づいた区別だ」「多くの女性から切実な訴えを受けてきた。政治は彼女たちの尊厳を守る義務がある」と主張する。
これに対し、LGBT支援団体などが「トランスジェンダーの人々を社会から排除する差別的な暴挙」と猛反発している。さらに、ブラジル弁護士会マットグロッソ・ド・スル州支部の「性の多様性委員会」が「憲法が保障する人間の尊厳を侵害するものだ」として条例を厳しく批判、州検察庁が違憲審査を検討中だと伝えられている。
こうした中、一部のブラジルメディアは、この「カンポグランデ・モデル」が、10月に控えた大統領選を含む総選挙の行方を左右する争点になると分析している。
すでに南部や内陸部の保守的な自治体では、同様の条例を導入しようとする動きが広がっている。最高裁がこの条例を「違憲」と判断し、差し止めを命じるかどうかにもメディアや国民の注目が集まっており、その司法判断が保守層の結束をさらに強める可能性も指摘されている。





