
【サンパウロ綾村悟】ブラジルなど南米4カ国が正式加盟する南米南部共同市場(メルコスル)と欧州連合(EU)は17日、パラグアイの首都アスンシオンで自由貿易協定(FTA)の署名式を行った。1999年の交渉開始から四半世紀余り、保護主義の台頭や環境規制を巡る対立という荒波を乗り越え、人口約7億5000万人、世界国内総生産(GDP)の約4分の1を占める巨大な自由経済圏が産声を上げた。
協定により、EU側は自動車や機械、化学製品などの工業分野で関税障壁が取り除かれる。特に最大35%に達していた自動車関税の撤廃は、欧州の基幹産業にとって強力な追い風となる。
メルコスル側は牛肉や鶏肉、砂糖といった農産品の対欧州輸出拡大を見込む。さらに、電気自動車(EV)生産に不可欠なリチウムの輸出拡大に加えて、欧州からの投資や技術協力も期待される。
一方、焦点となっていた農業分野での対立については、EU側が農家保護のための「セーフガード(緊急輸入制限)」条項を盛り込むことで妥結。安価な南米産品の流入による市場混乱を防ぐ安全網を確保し、国内産業の安定に配慮した。
ただ、EU最大の農業国フランスなど一部の国は、国内産業保護などの観点から強く反対している。欧州議会や各加盟国議会での承認阻止を狙う動きもあり、歴史的合意の発効への道のりは平坦ではない。
また、今回の合意の背景には、巨大自由経済圏の実現と別に過度な中国依存からの脱却を目指す「経済安全保障」の視点がある。
南米諸国にとって、中国は最大の貿易相手国として影響力を強めてきたが、今回のFTAにより欧州という安定した代替市場を確保できる。EUにとっても、EV生産に不可欠なリチウムなどの重要鉱物を南米から安定調達する狙いがある。






