トップ国際中南米ベネズエラ攻撃、南米に激震 自由主義回帰かさらなる混迷か

ベネズエラ攻撃、南米に激震 自由主義回帰かさらなる混迷か

 【サンパウロ綾村悟】米軍によるベネズエラへの電撃的介入と、マドゥロ大統領夫妻の拘束は、中南米全域に地殻変動をもたらしかねない。長年、反体制派を弾圧し、地域の不安定化を招いてきた独裁政権が排除された事実は、一部で歓迎される一方、地域の政治力学を根底から揺さぶりかねないからだ。

 今回の事態に対し、周辺諸国の反応はさまざまだ。

 ブラジルのルラ大統領は「一線を超えた」と軍事介入への懸念を表明した。しかし、その立場は複雑だ。国内ではボルソナロ前大統領に対する司法手続きを「民主主義の擁護」として正当化するが、国際社会から大統領選など選挙の正当性を否定されてきたマドゥロ政権を擁護すれば、「二重基準」との批判を免れない。

 コロンビアのペトロ大統領も「政治的解決」を訴えるが、その背景には人道的な懸念以上に、治安悪化への強い懸念がある。ベネズエラと国境を接する同国にとって、政変に伴う混乱や移民のさらなる流入は、国家の安定を直接脅かす死活問題だ。

 対照的に、「アルゼンチンのトランプ」と称されるミレイ大統領は「自由万歳」と米国の行動を熱烈に支持した。同政権の親米・市場重視路線は、南米の「自由主義の砦」として存在感を強めている。

 各国の反応が一枚岩でないことは、南米が今、イデオロギーの再編期にあることを如実に物語っている。米軍介入は、南米に保守化の強い波が押し寄せている中で起きた。

 また、中国の地域に対する影響力にも大きな打撃を与える。ベネズエラ産原油の約8割を買い支え、融資やインフラ投資でマドゥロ政権の「生命維持」を担ってきた中国だが、決定的な局面で実効性のある関与を示すことができなかったからだ。経済的結び付きが、必ずしも政治・安全保障上の抑止力に直結しないという現実がさらされた形だ。

 今後、ベネズエラ情勢が安定しなければ、移民問題は周辺国の重荷となる。今年は、ペルー(4月)やブラジル(10月)で地域の進路を左右する大統領選挙が控える。とりわけ南米の経済大国ブラジルが、対米・対中バランスを含めどのような選択をするかは、地域全体の安保環境を左右する。

 ベネズエラ事変は、単なる一国の政変ではない。選挙イヤーを迎える中南米において、「民主主義と秩序の正当性はどこにあるのか」という、極めて重い問いを突き付けている。

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