【サンパウロ綾村悟】南米チリで16日、現職ボリッチ大統領の任期満了に伴う大統領選が行われ、左派ジャネッテ・ハラ前労働・社会保障相(チリ共産党、51)と右派ホセアントニオ・カスト元下院議員(チリ共和党、59)が、12月14日の決選投票に進む見通しとなった。大統領の任期は4年、再選はできない。
選挙には計8人が立候補し、首位ハラ氏が26・8%、次点カスト氏が23・9%を得票する接戦となった。一方、全体的には保守系候補4人に7割近い得票が集まっており、各種世論調査から決選では右派カスト氏有利とみられる。
選挙での主要な争点は、急増する不法移民と組織犯罪拡大への対処だった。米政府がテロ組織に指定する、ベネズエラ発祥の犯罪組織「トレン・デ・アラグア」など、国際的な犯罪組織がチリ国内で麻薬流通、また誘拐に関与し、同国では凶悪犯罪の発生率が高くなっている。不法移民も急増し、治安・医療・住宅などの課題対応で、行政負担も限界に近づいている。
決選に臨むキリスト教保守のカスト氏は、前回の大統領選でも、ボリッチ大統領と決選を戦っており、知名度が高い。不法移民対策では、ボリビアやペルーとの国境沿いに「壁」を建設すると宣言、不法者の即時送還、組織犯罪への対策強化の公約が有権者の関心を引いている。
ボリッチ氏の後継である一方のハラ氏は、実務能力の高さが評価される。だが有権者は「共産党の理念や政策が、大統領権力に反映されるのではないか」と警戒、保守候補に票が流れやすい状況だ。
外交面では、カスト氏が米国との安全保障協力を重視し、中国への資源輸出依存の見直しを掲げるのに対し、ハラ氏は現状の経済関係維持と多角的外交を唱える。ただし、チリ経済において、銅やリチウムなどの自国資源を、中国輸出に依存している状況は、いずれが勝利しても転換が難しいとみられている。
今大統領選は、南米で広がる保守回帰の流れをくむ。治安と移民の問題は南米各国の共通の課題であり、来年4月にペルー、10月にブラジルで予定されている大統領選でも、それらへの対策が争点となる見通しだ。






