トップ国際中南米反米左派の終焉、ボリビアに新大統領 中国牽制、対米関係を正常化へ 等距離外交で日本も視野に

反米左派の終焉、ボリビアに新大統領 中国牽制、対米関係を正常化へ 等距離外交で日本も視野に

ボリビアのロドリゴ・パス大統領=ラパス(AFP時事)
ボリビアのロドリゴ・パス大統領=ラパス(AFP時事)

 南米ボリビアのラパスで8日、キリスト教民主党(PDC)に所属する中道ロドリゴ・パス大統領の就任式が行われた。20年続いた反米左派政権の終焉(しゅうえん)は南米全体の政治地図を大きく塗り替える可能性を秘めている。(サンパウロ綾村悟)

 南米の中央近くに位置するボリビアは、2000年代初頭までは米国との関係を重視し、麻薬政策などで緊密な協力関係を築いていた。

 ところが、ロサダ政権(00~03年)が打ち出した外国資本の誘致や天然ガス輸出計画が大規模な反政府デモにつながり、ロサダ大統領は辞任に追い込まれた。

 05年の大統領選挙では、コカ栽培農家で先住民出身のエボ・モラレス氏が、「天然ガスは(外国資本ではなく)われわれのものだ」として資源の国有化や先住民の権利拡大を主張、社会主義政党「社会主義運動(MAS)」を率いて政権を握った。

 就任後、資源国営化などを通じて4%の経済成長を記録、貧困率も大きく改善したことで「ボリビアの奇跡」と呼ばれた。反米姿勢を鮮明にし、反米左派のキューバ、ベネズエラと「米州ボリバル同盟(ALBA)」を結成して反米同盟の時代を築いた。

 一方、中国とは資源外交を深め、00年代後半からリチウムや天然ガスの採掘権を巡って中国企業と交渉、中国からの融資でインフラを整備したが、ボリビアの対中債務も膨れ上がった。

 ボリビア政界に転換点が訪れたのは19年だ。モラレス氏の再選を巡る選挙不正疑惑で大規模な反政府デモが発生し、同氏はアルゼンチンに亡命した。20年の選挙でモラレス氏の後継候補とされたアルセ大統領が当選したが、この後、ボリビアの財政と経済は急速に悪化した。

 財政収入の多くを頼っていた天然ガス価格の下落などが財政を直撃、過剰な社会保障費の支出も債務を膨張させた。さらに、石油などの燃料輸入がインフレを悪化させ、外貨不足に直結した。

 経済に対する不満は今年8月の大統領選挙に直結した。与党内の分裂も加わり選挙に惨敗、決選投票に進むこともできなかった。強権で憲法改正を重ねながら政権の延命を図ってきた反米左派政権のポピュリズム、資源ナショナリズムが限界を露呈した形だ。

 反米左派政権に代わる中道のパス新大統領は、市場改革と米国との関係正常化を約束している。トランプ政権が進める「麻薬戦争」に協力することも視野に入れている。

 キューバやベネズエラと共に反米同盟を担い、反米左派の砦(とりで)だったボリビアの転換は、南米全体の政治地図を塗り替えることになる。「アルゼンチンのトランプ」ことミレイ大統領の誕生は地域に大きな衝撃を与えたが、ボリビアの反米左派の終焉は、まさに南米の「ピンクタイド(左派の潮流)」の流れを変えるものだ。

 特に、ベネズエラは米国と「麻薬戦争」を巡って衝突している。外交面でベネズエラを支援してきたボリビアが米国との関係改善に進むことは、ベネズエラの孤立化にもつながるものだ。

 さらに、パス政権の誕生は、中南米地域における米中の影響力にもインパクトを与えようとしている。ボリビアには、戦略資源として欠かせない世界最大級のリチウム資源がある。左派政権は中国企業との交渉を進めていたが、パス氏はこの交渉の精査や見直し、国際入札導入を発表している。中南米でのプレゼンス強化と戦略資源の確保を急ぐ米国にとっては願ってもない好機だ。

 また、パス新政権が求める等距離外交には日本の参加も視野に入りそうだ。過去には、日本の商社がボリビアのリチウム資源開発や付加価値製品の開発で交渉した時期もあった。

 「米国でも中国でもない第三極」としての日本の外交が、トランプ政権に反発を抱く一部の南米諸国に届くことは、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議(韓国・慶州)における高市早苗首相とチリの左派ボリッチ大統領の会談でも明らかになっており、南米での中国牽制(けんせい)という意味でも日本の外交や投資への参加が期待される。

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