
「メタノール中毒事件(偽造酒)」が、ブラジル社会を震撼(しんかん)させている。今年9月に発覚した後に急拡大し、これまでに217件の疑い事例が発覚した他、5人の死亡が確認されている。
工業用メタノールは、見た目や匂い、味は飲用アルコールに近いが、飲めば昏睡(こんすい)や失明、死に至る猛毒。1リットルの酒にティースプーン1杯(5ミリリットル)を混ぜるだけで致死量に達するほどだ。
サンパウロ州を中心に大量に押収されているが、中には1本のウイスキーから30人分の致死量に相当する工業用メタノールが検出されたとの報道も。
ブラジル保健省は、特に無色の蒸留酒を避けるように勧告を出しており、購入する場合には製造・販売元の確認を求めている。今のところ、安全とされているのは「ビールとワイン」という。
メタノール中毒事件で特に打撃を受けているのが、最大都市サンパウロの酒場だ。ブラジル人にとって夜の酒場に欠かせないのは、ブラジル原産のサトウキビから作った蒸留酒「カシャッサ」にライムと砂糖、たっぷりの氷を混ぜた「カイピリーニャ」と呼ばれるカクテル。
1日数百杯ものカイピリーニャを販売していた有名店でも、事件後は多くがビールにシフトしたという。
一方、Ⅹ(旧ツイッター)などのSNSでは、ブラジルの酒好きなどを中心に「(強い酒を飲めない)ストレスで死にそうだ」「来年のカーニバルはノンアルコールかも」などという投稿も飛び交っている。(S)





