【サンパウロ綾村悟】南米ベネズエラの反米左派マドゥロ大統領は25日、米トランプ政権が空母「ジェラルド・フォード」をカリブ海に派遣したことについて、「米国ははてしなく続く戦争を捏造(ねつぞう)し、侵攻の口実をつくろうとしている」と非難した。
米軍が最新鋭の空母を派遣したことに関して、ブラジルメディアは「カリブ海の力の均衡が崩れる」(フォーリャ紙)などと報道、麻薬対策を超えた戦略的メッセージかつトランプ政権が本気で中南米への影響力行使に踏み切ったものと捉えられている。
マドゥロ氏は、25日の全国向け放送の中で、「(空母派遣は)帝国主義によるわが国への軍事侵攻の準備に他ならない」と強く非難した。マドゥロ氏は、ベネズエラ軍に即時警戒態勢を指示した上で、沿岸部への部隊移動と軍事演習を強化するように命じた。ロシア製地対空ミサイルの配備を強調、米国への対抗姿勢を明らかにしている。
米国防総省が空母の派遣を発表したのは24日。米軍の技術力の象徴ともされる最新鋭の空母打撃群を、欧州展開中を中断してカリブ海に派遣することは異例の措置だ。トランプ政権は、8月下旬から原子力潜水艦や海兵隊を含む南方軍をカリブ海に派遣し、麻薬カルテル対策を進めてきた。麻薬密輸船(米軍発表)に10回以上の攻撃を繰り返し、これまでに43人が死亡した。
トランプ政権は、ベネズエラの隣国のコロンビアにも麻薬対策で圧力をかけており、24日には反米左派のペトロ大統領とその家族、内務相らに麻薬取り引き関与の疑いで制裁措置を発表したばかり。ペトロ大統領は、米軍による攻撃を「殺人行為」「国際法違反」と批判、地域一帯の緊張が高まっている。





