トップ国際中南米トランプ氏、裁判は「魔女狩り」 ルラ大統領 関税50%に主権侵害と反発

トランプ氏、裁判は「魔女狩り」 ルラ大統領 関税50%に主権侵害と反発

7日、ブラジル・リオデジャネイロで記者会見するルラ大統領(AFP時事)
7日、ブラジル・リオデジャネイロで記者会見するルラ大統領(AFP時事)

関税50%に主権侵害と反発

「ブラジルのトランプ」こと、右派ボルソナロ前大統領によるクーデター計画への関与疑惑を追及する裁判が、ブラジルと米国両政府の深刻な外交問題へと発展している。トランプ米大統領は裁判を「魔女狩り」と批判、ブラジルに対して50%の関税を課すと通告した。「主権侵害」と訴える左派ルラ大統領への支持率を押し上げる一方、ボルソナロ氏に対する厳しい措置が保守派の団結につながっている。(サンパウロ綾村 悟)

トランプ大統領は今月9日、自身のSNSでブラジルのルラ大統領に宛てた書簡を公開、8月1日をもってブラジルからの全ての輸入品に50%の関税を課すと通告した。

トランプ氏は、各国に対して「相互関税率」を通告する書簡を送っているが、50%はこれまでの最高で、内外のメディアが驚きを持って報じた。今年4月の時点では、対米貿易で赤字のブラジルは10%だったからだ。

トランプ氏は、書簡の中で「(裁判で)ボルソナロ大統領に国際的な恥辱を与えた」「米国人の言論と選挙の自由を攻撃した」とブラジル政府と司法を批判した。

ボルソナロ被告が罪に問われているのは、2023年10月の大統領選挙後に、クーデター計画やルラ大統領の暗殺計画などに関与して政権発足を妨げようとした疑惑だ。

最高裁で行われている裁判は、今年中にも判決が出るものとされている。有罪となれば、ボルソナロ被告は最高40年の実刑判決を受ける。

ボルソナロ被告は、裁判を「政治的な迫害だ」と批判し無罪を主張、さらに同被告の支持者や保守派は裁判を「政治的なショーだ」と主張する。

最高裁のモラエス判事は18日、ボルソナロ被告に対して逃亡防止のために夜間外出禁止(軟禁)や足首への監視装置の装着、SNSの禁止などを命じた。ボルソナロ氏は、すでにパスポートを提出するなど協力的な姿勢を見せており、これらの措置は司法活動を越えた印象操作との批判も出ている。

こうした中、トランプ氏は、ボルソナロ被告に対する裁判を「司法の政治武器化」「左派司法による保守派への弾圧」に向かう世界的な流れの一つと受け止めて即時停止を求めている。トランプ氏が受けた米国での一連の裁判と同じ構図を見ているわけだ。

一方、50%関税の直接のきっかけは、ルラ氏が議長を務めた新興国グループBRICS首脳会議での発言にあったとみる向きも。ルラ氏は、「世界は変わった、帝王はいらない」「ドルを介さない貿易手段を」などと主張した。最新の世論調査では、ブラジルの有権者の半数以上が、これらの発言がトランプ氏を挑発して高関税につながったと答えている。

トランプ関税に対して、ルラ氏は「ブラジルの主権や司法の独立権を侵害、不当な干渉で脅迫だ」と批判、政府広告を通じて国民の愛国心をあおることで支持率を上げた。来年の大統領選挙に向けて国内支持を固める絶好の機会と捉えている。

ただし、米国に対する強硬姿勢とボルソナロ氏に対するブラジル司法の動きは、両刃(もろは)の剣にもなりかねない。

ルラ氏は本来、強烈な感情表現を武器にしながらも、したたかに実利を取りに行く政治家だ。実際に50%の関税が発動すれば、コーヒーやオレンジジュースなど消費者に直結するものを米国に輸出するブラジルが受ける打撃は大きい。米国に代わる輸出先を求めるのは簡単ではない。

「外交で国益を失った大統領」とならないため、トランプ氏との交渉は避けられない立場だ。

米政治専門紙ポリティコは、「50%関税は中国寄りの旗振り役を務めているブラジルへの懲罰」と論評、関税はブラジルを通した中国と親中派に向けたメッセージだと説明している。

現在、保守系の弁護士1万5千人が、ボルソナロ被告に対する追跡装置の装着義務など一連の処遇について、「民主主義の根幹を否定している」などと最高裁決定を批判する連帯声明を発表しており、トランプ関税とボルソナロ被告を巡る裁判が来年の大統領選挙に向けた前哨戦となりそうだ。

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