
メキシコ政府は1日、史上初めて国民の直接投票によって最高裁などの判事を選出する「司法選挙」を実施した。国民の関心は低く、投票率はわずか13%。医療、教育、治安の危機が続く中で、70億ペソ(約524億円)以上もの予算を投じた選挙へ批判が高まっている。国民の多くは選挙への理解が不十分なままで、候補者に関する情報も不足していたため、関心が低く、6種類もの投票用紙を用意する複雑さも混乱を招いた。
「薬のない病院、屋根もない学校、装備が足りない警察…そういう現実がある中で、こんな選挙が本当に必要だったのか。完全に(予算の)無駄遣いだ」―SNSではこんな声も上がった。
司法選挙は、ロペスオブラドール前大統領による司法改革の一環として提案された。シェインバウム現政権は「歴史的な民主主義の前進」として選挙を評価するが、野党や専門家、市民団体からは、司法の独立性に対する懸念や批判の声が上がっている。
専門家は、司法という高度な専門性を要する分野で、一般投票によって人材を選出することの危険性を指摘。司法経験のない候補者も多数含まれており、一部には特定の勢力や利害関係者とのつながりを疑われる人物もいた。
市民団体はすでに、選挙費用の詳細な監査と、制度の見直しを求めている。高額な選挙が、司法制度の透明性や国民の権利保護に寄与するのか。単なる政治的パフォーマンスに終わるのか。厳しい国民の目が注がれている。(ハンソニ・トレス)