メキシコで司法改革が進められている。全裁判官を国民の直接選挙で選出するなど「司法の民主化」を目指す大改革だが、司法の独立性、専門性が損なわれると懸念の声も上がる。現在の連邦司法制度では、最高裁判事は大統領が指名し、上院が承認する。任期は15年。高等裁判所の判事は、連邦司法評議会が選出し、その職務を監督する。専門性とキャリアが重視される一方で、透明性の欠如、汚職、手続きの遅延、市民との距離といった批判が多くあり、2024年9月に司法改革が承認された。
新体制では、すべての判事は、国民の直接選挙で選ばれる。最高裁判事は11人から9人に削減され、任期も12年に短縮される。一方で連邦司法評議会は廃止され、選挙で選ばれた構成員による司法監察裁判所を新設、判事の調査・処分を行う。最初の選挙は25年6月に実施される予定。司法に市民の声が反映されやすくなる、エリート主義や腐敗の抑制を図ることができる一方で、判事の選挙活動による司法の政治化、判決の公平性や中立性の低下、司法の独立性の低下の可能性などが指摘されている。
(ハンソニー・オヘダ)