【サンパウロ綾村悟】米大統領選挙の投開票を控え、南米最大の経済大国ブラジルではその結果、特にトランプ米前大統領が当選した場合にブラジルが受ける影響が注目されている。
フォーリャ紙は4日、トランプ政権復活のケースを見て、左派のルラ政権関係者が不安になっているとの記事を掲載した。特に気候変動や環境問題への対策で、大きな対立を生む可能性があるとしている。
ルラ大統領はすでに1日、ハリス米副大統領への支持を明確にし、トランプ氏の当選は「姿を変えた全体主義やナチズム」を生み出しかねないと警告した。
またその場合、環境問題などを通じてバイデン政権と築いた米国との良好な関係も崩れかねないとしている。
ブラジルは、2025年にアマゾン川河口のベレンで、国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)を開催する。アマゾン熱帯雨林の保護などを世界に訴える会議の成功には、資金面はじめ、米国の支援が欠かせない。だがトランプ氏は、バイデン政権のエネルギー、環境対策を見直す可能性が高い。
また、対中政策でも厳しい姿勢で挑むことが予想され、中国政府と親密なルラ政権にとって悩ましい。
一方、ボルソナロ前大統領を支持するブラジルの保守層は、トランプ政権の誕生を待ち望んでいる。ボルソナロ氏に近い関係者は、ルラ政権下のブラジルでは、左派による保守派つぶしが横行していると主張する。ボルソナロ支持者らによるフェイクニュース対策に絡んでブラジルのX(旧ツイッター)が最高裁命令で一時閉鎖されたり、ボルソナロ氏が権力乱用で2030年までの公職禁止を命じられたことなどが代表的事例だ。
ブラジルの一部メディアは、トランプ氏が再選した場合、こうした流れが変わるとも予想する。
米大統領選挙は、ブラジル国内での左派と右派のパワーバランス、また再来年のブラジル大統領選挙にも影響を与えそうだ。