
【サンパウロ綾村悟】ベネズエラ大統領選挙が実施されて28日で1カ月。26日には、ベネズエラ選管(CNE)幹部の一人が選挙不正を内部告発するなど、反米左派マドゥロ大統領の3選に国内外から疑義を唱える声が高まっている。だが、マドゥロ氏は弾圧を含め、強権で逃げ切る姿勢だ。
不正を告発した選管幹部は、投票の締め切り時間に合わせて、野党の選挙監視員が閉め出されたと指摘、不正が行われたと主張している。だが、マドゥロ大統領は、立法、行政、司法の3権を掌握。軍、選管なども全て大統領の影響下にあり、選挙結果が覆る可能性は低い。
大統領選挙では、開票に伴う速報もなく、突如として選管がマドゥロ氏の過半数獲得による当選を発表した。選挙前の世論調査では、野党候補ゴンサレス氏が圧倒的な支持率を得ており、選挙後に行われた野党独自の調査でもゴンサレス氏が優勢で、マドゥロ氏の得票は30%にすぎなかった。
こうした中、欧米やアルゼンチンなどはゴンサレス氏の当選を認めるよう求め、南米の主要左派であるブラジルやチリなど多くの国々と国連が集票作業の詳細な公開を求めるなど、国際社会も圧力を強めている。
しかし、マドゥロ大統領がこれら外国からの反対の声に耳を傾ける様子は全く見えない。27日には、内相や石油相を含めた閣僚の交代を発表、側近で要職を固める政権基盤の強化に乗り出した。
国内では、野党指導者のマチャド氏を中心に、選挙の見直しやマドゥロ氏退陣を要求するデモが続いているが、政権側はデモ参加者や野党に対する容赦ない弾圧を行っており、これまでに20人以上が死亡、野党関係者を含む2000人以上が逮捕・拘束された。
こうしたマドゥロ氏の強権を支えるのは、中国、ロシア、ニカラグア、イランなど親ベネズエラ国家だ。米国から制裁を受ける石油部門を中国が支援、ロシアやイランは軍事部門や生活必需品を供給する。
反米で強権体制を敷くマドゥロ政権の存続は、これらの国々にとっても地政学的に欠かせない。
中米ニカラグアの反米左派オルテガ大統領は26日、ベネズエラで反大統領派の武装蜂起が起きた場合は、マドゥロ大統領を支持すると表明、戦闘員派遣の可能性を示唆した。