【サンパウロ綾村悟】世界最大の湿原で世界遺産にも指定されている「パンタナル湿原」で、昨年比で10倍相当もの火災が発生し、世界有数の生態系に与える影響が懸念されている。
ブラジル国立宇宙研究所(INPE)が5日までに公開した資料によると、同湿原で発生した火災は今年初めからの4カ月間で978件に上り、昨年同期の91件を大きく上回った。
ブラジルでは、昨年末から中西部や南東部においてエルニーニョ現象が原因とされる記録的な熱波が発生している。加えて、パンタナルの昨年末から今年初めにかけての降雨量は、記録的な干ばつの影響で例年の6割近くまで落ち込んだ。
今年の火災は、過去最悪を記録した2020年の2135件に続くもの。また、パンタナルは7月以降から乾期に入るため、火災の増加と生態系への影響が懸念されている。火災の原因は、自然発火によるものもあるが、多くは開発や焼き畑などを目的とした火だ。
20年の火災では、パンタナル全域の27%(約5万平方㌔)が被害を受け、ジャガーや絶滅危惧種ルリコンゴウインコなどの生息地が破壊された。
パンタナルは、南米大陸のほぼ中央に位置し、総面積19万5千平方㌔を誇る世界最大の湿原。「動植物の楽園」と言われ、豊かな数千種類もの動植物相を抱えているだけでなく、面積比では熱帯雨林をも超えるほどの二酸化炭素を地面に吸収し、温暖化や気候変動を防ぐ重要な役割を果たしている。