【サンパウロ綾村悟】メキシコで2日、ロペスオブラドール大統領の任期満了に伴う大統領選挙が実施され、即日開票の結果、左派与党「国家再生運動」から出馬したクラウディア・シェインバウム前メキシコ市長(61)の当選が確定した。就任式は10月1日、任期は6年で再選はできない。

メキシコ選管当局(INE)によると、開票率70%の時点でシェインバウム氏の得票率は58%。野党連合から出馬し、28%を得票した先住民系の中道右派ソチル・ガルベス上院議員(61)に30%近くの大差をつけて圧勝した。メキシコ初の女性大統領が誕生する。 シェインバウム氏は「私はメキシコ初の女性大統領になる」と勝利を宣言、X(旧ツイッター)への投稿では「(国民を)失望させるようなことは決してしない」などと約束した。
今回の選挙は、国会の上下院議員や州知事や市会議員など多くのポストを決めるメキシコでは過去最大の選挙だった。与党「国家再生運動」は、国会の上下院議員選挙において単独過半数には届かないものの圧勝した。
現職ロペスオブラドール大統領は、最低給料引き上げや貧困対策などの手厚い社会保障政策を通じて6割近い支持率を保っており、シェインバウム氏はこれらの政策を引き継ぐことを約束することで、現職の支持層を引き寄せた。また、大統領の次に要職ともいわれるメキシコ市の市長を18年から務めていたことも知名度などの点で有利に働いた。
一方、次期政権に対する期待と課題も少なくない。最優先課題の一つが、過去最悪ともいわれる治安問題だ。麻薬犯罪組織が絡んだ殺人などの凶悪犯罪は悪化の一途をたどっている。今回の総選挙では、市長候補を含む37人が殺害された(現地メディア報道)。シェインバウム氏は、国家警備隊の増強などを公約として掲げているが、対策の遅れは支持率低下にもつながりかねない。
また、メキシコ経済は米中対立の隙間を縫うように入り込んだ中国からの投資も含めて好調だが、11月の米大統領選挙で「もしトラ(トランプ元米大統領が当選)」すれば、貿易や移民問題で厳しい交渉を求められることは必至だ。現政権が重視する社会保障重視などで膨らんだ財政赤字解消も急がれる。