
【サンパウロ綾村悟】メキシコで2日、現職ロペスオブラドール大統領の任期満了に伴う大統領選挙が実施された。即日開票され、早ければ、2日深夜(日本時間3日昼)にも新大統領は決まる見通しだ。メキシコでは、再選が禁止されており、国民に人気の高いロペスオブラドール氏は出馬できない。就任式は11月、任期は6年。
現時点で3人が大統領候補となっているが、事実上、与野党2人の女性候補による一騎打ちとなっており、メキシコ初の女性大統領が誕生することになりそうだ。
最新の世論調査によると、左派与党「国家再生運動」から出馬しているクラウディア・シェインバウム前メキシコ市長(61)が支持率54%で首位に立ち、中道右派「国民行動党」に所属する先住民系のソチル・ガルベス上院議員(61)が34%で追い上げている。ガルベス氏は野党連合から出馬している。
首位を走るシェインバウム氏の強みは、ロペスオブラドール氏の元側近かつ後継候補として、同氏の強い支援を得ているところだ。
ロペスオブラドール氏は、最低給料の引き上げや貧困層支援を含む福祉、国有企業重視など「バラマキ」とも言われる政策を続けてきた。同氏は、6割近い政権支持率と党内への影響力を背景に院政を敷くとも言われている。
ガルベス氏は、治安悪化に苦しむメキシコの現状打開などを訴える。麻薬犯罪組織絡みの凶悪犯罪に苦しむメキシコの治安は過去最悪とも言われる状況だ。
今回の選挙は、大統領選挙だけでなく、議会議員と地方自治体の首長選挙なども行われる。地元メディアによると、これまでに37人の立候補者が殺害されており、31日にもプエブラ州イスカルデ・マタモロスの市長候補が銃殺されたばかりだ。現政権は、国家警備隊を創設するなど治安対策を強化しているが、思うような結果は出てない。
一方、メキシコ経済は米中対立を受けて、中国からの投資が続いており非常に好調だ。ただし、米大統領選挙でトランプ前大統領が当選した場合には、メキシコを経由して米国に流れ込んでくる中国企業の製品が問題となる可能性が高く、次期大統領は移民・経済問題などで米国と厳しい外交問題に直面することにもなりそうだ。