【サンパウロ綾村悟】南米エクアドルの治安当局が首都キトにあるメキシコ大使館に突入し、メキシコへの亡命を求めていたグラス元副大統領を逮捕したことを受けて、メキシコ政府は6日、エクアドルとの外交関係を断絶した。
大使館突入に対して、メキシコのロペスオブラドール大統領は「国際法とメキシコの主権に対する重大な違反行為だ」などと厳しく批判、外務省がエクアドルとの断交を明らかにした。
逮捕されたグラス氏は、左派コレア政権下(2013~17年)で副大統領を務めたが、公共事業に関わる汚職に関与したとして実刑判決を受けていた。同氏は、仮釈放中の昨年12月、メキシコ大使館に保護と亡命を求めて駆け込んでいた。
メキシコ政府は5日に亡命を許可、同夜にエクアドル警察がメキシコ大使館に突入し、グラス氏の身柄を確保した。エクアドル外務省は、突入時に大使館員が負傷したと主張、国際司法裁判所(ICJ)への提訴を行う予定だという。
エクアドル政府による大使館突入は、「大使館の主権や不可侵」などを決めたウィーン条約に反する。中南米各国からも厳しい批判が相次いでおり、反米左派の中米ニカラグアはエクアドルとの断交を発表、左派ルラ政権下のブラジルも「ウィーン条約に反する」などと厳しく批判している。
一方、エクアドル側は大使館突入は主権を守るための行為だと正当化しており、実刑判決を受けている犯罪者を大使館で保護しただけでなく、亡命まで認めたことはメキシコ政府による内政干渉だったと主張している。