ベネズエラ「エセキボ地域」領有主張 独裁政権維持に利用か ガイアナ反発 高まる緊張

ベネズエラのマドゥロ大統領 3日、カラカス(EPA時事)

南米ベネズエラによる隣国ガイアナの一部領有宣言が軍事的緊張や外交問題へと発展している。ベネズエラが領有を主張しているガイアナ西部の「エセキボ地域」では、世界有数の油田が発見されている。世界最大の原油埋蔵量を持つベネズエラが領有することになれば、同国と関係が深いイランやロシアを交えた勢力の拡大にもつながる。ただし、現時点では、ベネズエラがエセキボ地域の実効支配に動く可能性よりも、来年実施される大統領選挙を見据えた「権力維持」の動きという側面が強そうだ。(サンパウロ・綾村 悟)

南米東北部の大西洋岸では近年、大規模な海底油田の発見が相次いでいる。その恩恵を受けているのは、ガイアナ、スリナム、ブラジルの3カ国で、環境保護のために試掘許可が下りないブラジルを除けば、米エクソンモービルなどの外資による開発が進んでいる。

ガイアナでは2015年に油田が発見されたばかりだが、27年までに原油産出量で世界21位のベネズエラを超えるともいわれている。中でも、エセキボ地域では次々と新たな油田が発見されており、推定埋蔵量が世界7位のクウェートを抜く可能性がある。

ガイアナは、オランダや英国の植民地を経て1966年に独立したばかり。英連邦に加盟しており、インド系とアフリカ系住民が約80万人の全人口の多くを占める。独立後の政治混乱もあってガイアナは南米最貧国の一つだったが、昨年の経済成長率は世界一だった。

エセキボ地域は、19世紀からガイアナとベネズエラが領有権を争ってきた。1899年には、国際仲裁裁定によりガイアナへの帰属が認められたが、ベネズエラは帰属を主張し続けてきた経緯がある。

ガイアナで油田が発見された後、ベネズエラ政府は2015年7月に国連への調停を依頼した。

外交手段を優先していたベネズエラの動きが過激化したのは最近のことだ。今月3日には、エセキボ地域の領有主張の是非を問う国民投票がベネズエラで行われ、95%が賛成票を投じた。

国民投票の結果を受けて、マドゥロ大統領は国境付近の国軍部隊を強化し、5日には、エセキボ地域を含む「グアヤナエセキボ」と名付けた新たな州の創設を指示した。

こうした動きに対して、ガイアナは国際司法裁判所(ICJ)に訴えると同時に、米国との関係強化に動いた。米国は7日、ガイアナと共同で合同軍事演習を行うと発表した。米政府は、ガイアナを支持する意向を表明している。

ベネズエラ、ガイアナ両国と国境を接するブラジルのルラ大統領は、両国に対して「思慮ある対応」を求めており、14日にはオブザーバーとしてベネズエラ・ガイアナ両首脳による直接会談に参加する予定だ。

ベネズエラがガイアナ領内に実際に侵攻すれば、国際社会の強い非難を浴び、厳しい制裁が科されることになる。左派系のルラ大統領など、これまでベネズエラに一定の理解を示してきた国々の後ろ盾をなくすことにもなりかねない。

独裁を強めるマドゥロ大統領にとって、喫緊の課題は来年の大統領選挙に勝利して権力を維持することだ。そのために、マドゥロ氏は国軍幹部を取り込み、人権侵害と国際社会から批判されながらも、反大統領派を弾圧してきた。前回の大統領選挙では、反大統領派の立候補を次々と阻んで勝利した。

ガイアナとの衝突は、一時的に国内の結束を強め、権力を維持し続けるための手段として機能しつつある。ベネズエラの検察当局は、国民投票の妨害を図ったとして、野党側の統一大統領候補でもあるマリア・マチャド元国会議員の関係者を訴追した。今後も、ガイアナ問題を利用して、求心力を高めながら反大統領派の弾圧を続ける可能性は高い。

ブラジルのメディアでは、ガイアナ問題の背後に、ベネズエラに軍事援助を行っているロシアの影を指摘する声もあるが、マドゥロ大統領にとって最も優先されるものは権力維持だ。

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