次期大統領にミレイ氏 アルゼンチン 親中路線と決別へ

9 日 、 ア ル ゼ ン チ ン 大 統 領 選 の 決 選 投 票 に 勝 利 し 、 ブ エ ノ ス ア イ レ ス で 支 持 者 に 手 を 振 る ハ ビ エ ル ・ ミ レ イ 氏 ( A F P 時 事 )

【サンパウロ綾村悟】南米アルゼンチンで19日、左派フェルナンデス大統領の任期満了に伴う大統領選挙の決選投票が実施され、リバタリアン(自由至上主義者)の独立系右派ハビエル・ミレイ下院議員(53)が当選した。深刻な経済危機に対し、通貨ペソを廃止して米ドルを導入するなどの抜本的な改革を主張。外交面では、現政権の親中路線と決別し、米国との関係強化を進める見通しだ。

ミレイ氏は勝利演説で「インフレ、失業、貧困など途方もない課題が待つが、今日からアルゼンチンの再建は始まる」と力強く宣言した。選管によると、開票率97・6%時点の得票率は、ミレイ氏が55・8%、左派与党連合のセルヒオ・マサ経済相(51)が44・2%。ミレイ氏の就任は12月10日で、任期は4年。

インフレ率が3桁という深刻な経済状況を立て直すため、ミレイ氏は経済のドル化や中央銀行の解体、小さな政府の実現など抜本的な改革を訴えている。今後は議会との折衝や国際通貨基金(IMF)との債務再編交渉などで政治手腕が問われることになる。

外交面では、中国の一帯一路構想に参加する現政権の親中路線を厳しく批判。中国との関係凍結を打ち出しており、米国との関係強化が見込まれる。日本にとっても、リチウムなど重要資源を抱えるアルゼンチンとの関係を強化する機会となり得る。

また、ミレイ氏は、今年8月の新興5カ国(BRICS)首脳会議で承認されたアルゼンチンの新規加盟にも反対している。中国やロシアが狙うグローバルサウスの囲い込みによる勢力拡大にも影響が出そうだ。

ミレイ氏には、選挙演説でチェーンソーを振りかざすなど過激なイメージがつきまとう。しかし、今年9月、米国の保守派コメンテーター、タッカー・カールソン氏のインタビューで、リベラリズムが強いアルゼンチンの問題を論理的に指摘し、メディアによる極右のレッテル貼りに対抗した。

トランプ前米大統領は、ミレイ氏の当選について「アルゼンチンを再興させるだろう」と祝福した。

アルゼンチンは、ブラジルと並ぶ中南米の大国。近年続いた左傾化の波により、中南米33カ国のうち保守派政権はパラグアイやグアテマラなど5カ国にとどまっていた。中南米の左傾化に合わせるように中国の影響力も拡大してきたが、アルゼンチンで保守派大統領が誕生したことは、中南米の政治潮流を大きく変える可能性を含んでいる。

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